〔第11問〕(配点:2)
因果関係に関する次のアからオまでの各記述を判例の立場に従って検討した場合,誤っているものの個数を後記1から5までの中から選びなさい。(解答欄は,[No.13])
ア.甲は,他の共犯者5名と共に,約3時間にわたり,マンションの一室において,Vの頭部,腹部等を木刀で多数回殴打していたところ,これにより極度の恐怖感を抱いたVが,同室から逃走し,甲らによる追跡から逃れるために,同マンション付近にある高速道路に進入し,疾走してきた自動車に衝突され,死亡した。この場合,甲らの上記殴打行為とVの死亡との間に,因果関係はない。
イ.甲は,Vの頸部を包丁で刺突し,致命傷になり得る頸部刺創の傷害をVに負わせたところ,Vは,病院で緊急手術を受けたため一命をとりとめ,引き続き安静な状態で治療を継続すれば数週間で退院することが可能となったが,安静にせず,病室内を歩き回ったことから治療の効果が上がらず,同頸部刺創に基づく血液循環障害による肝機能障害により死亡した。この場合,甲の上記刺突行為とVの死亡との間に,因果関係はない。
ウ.甲は,Vの顔面を1回足で蹴ったところ,特殊な病気により脆弱となっていたVの脳組織が崩壊してVが死亡したが,当該病気の存在について,一般人は認識することができず,甲も認識していなかった。この場合,甲の上記足蹴り行為とVの死亡との間に,因果関係はない。
エ.甲は,医師資格のない柔道整復師であるところ,自己に全幅の信頼を寄せるVから,風邪の治療について相談を持ち掛けられた際に,Vに対し,食事や水分補給を控える一方,発汗を促すという医学的に明らかに誤った治療法を繰り返して指示し,これに忠実に従ったVが症状を悪化させ,脱水症状に陥り,死亡した。この場合,甲の上記指示行為とVの死亡との間に,因果関係はない。
オ.甲は,自動車を運転中,路上で過失により通行人Vに同車を衝突させてVを同車の屋根に跳ね上げ,意識を喪失したVに気付かないまま,同車の運転を続けていたところ,同乗者がVに気付き,走行中の同車の屋根からVを引きずり降ろして路上に転落させ,Vは,頭部打撲に基づく脳くも膜下出血により死亡したが,これが同車との衝突の際に生じたものか,路上に転落した際に生じたものかは不明であった。この場合,甲の上記衝突行為とVの死亡との間に,因果関係はない。