〔第17問〕(配点:3)
次の【判例】は、窃盗被疑事実の嫌疑に基づいて逮捕(以下「本件逮捕」という。)された被疑者からその日のうちに任意で尿が採取され(以下「本件採尿」という。)、その尿についての鑑定書(以下「本件鑑定書」という。)が覚醒剤自己使用の事実を立証するための証拠として提出された事案において、その証拠能力を否定した最高裁判所の判例(覚せい剤取締法違反等被告事件に係る最高裁判所平成15年2月14日第二小法廷判決・刑集57巻2号121頁)を抜粋したものである。後記アからオまでの【記述】のうち、【判例】に整合しないものは幾つあるか。後記1から6までのうちから選びなさい。(解答欄は、[№27])【判例】「本件逮捕には、逮捕時に逮捕状の呈示がなく、逮捕状の緊急執行もされていない(中略)という手続的な違法があるが、それにとどまらず、警察官は、その手続的な違法を糊塗するため、(中略)逮捕状へ虚偽事項を記入し、内容虚偽の捜査報告書を作成し、更には、公判廷において事実と反する証言をしているのであって、本件の経緯全体を通して表れたこのような警察官の態度を総合的に考慮すれば、本件逮捕手続の違法の程度は、令状主義の精神を潜脱し、没却するような重大なものであると評価されてもやむを得ないものといわざるを得ない。そして、このような違法な逮捕に密接に関連する証拠を許容することは、将来における違法捜査抑制の見地からも相当でないと認められるから、その証拠能力を否定すべきである(中略)。」「本件採尿は、本件逮捕の当日にされたものであり、その尿は、上記のとおり重大な違法があると評価される本件逮捕と密接な関連を有する証拠であるというべきである。また、その鑑定書も、同様な評価を与えられるべきものである。」【記述】
ア.本件逮捕は窃盗被疑事実の嫌疑に基づくものである一方で、本件採尿やその尿の鑑定は覚醒剤自己使用の被疑事実の嫌疑に基づくもので、本件鑑定書は後者の事実の立証に用いられるものであるから、本件逮捕の違法が、本件鑑定書の証拠能力に影響を及ぼすことはない。
イ.違法収集証拠排除法則によって証拠が排除されるための要件である「違法の重大性」と「排除相当性」のうち、「違法の重大性」は、手続の客観的な違法の程度に着目するものであるから、その要件を充足するか否かの判断に際して、捜査機関側の主観的事情が考慮されることはない。
ウ.本件逮捕の違法を糊塗する目的でされた逮捕状への虚偽記載や公判廷での事実に反する証言等は、本件逮捕後にされたものであるから、これらの行為の存在が本件逮捕自体の違法性の程度に影響を及ぼすことはない。
エ.違法な手続と最終的に獲得された証拠との間の因果性(関連性)の程度は、「違法の重大性」の判断における考慮要素であり、「排除相当性」の判断においては考慮されないから、本件逮捕と本件鑑定書との間の因果性(関連性)の程度が、本件鑑定書の「排除相当性」の判断に影響を及ぼすことはない。
オ.鑑定は専門家によって客観的になされるものであり、その結果を記載した鑑定書は定型的に高度の信頼性を有する証拠といえるから、鑑定の対象となる尿が本件のように逮捕当日に被疑者から任意提出されたもので、重大な違法を伴う逮捕と密接に関連するものであったとしても、そのことが、尿の鑑定書の証拠能力に影響を及ぼすことはない。