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司法試験 / 刑法(短答)

2023年 司法試験 刑法(短答式) 第1問 解説

  • 刑法総論

解説

AI 生成

この解説は AI が生成したものです。誤りが含まれる可能性があるため、条文・判例などの一次資料を必ず確認のうえ、最終的な判断はご自身で行ってください。

問題と選択肢

〔第1問〕(配点:4)

次のアからオまでの各記述を判例の立場に従って検討し、正しい場合には1を、誤っている場合には2を選びなさい。(解答欄は、アからオの順に[No.1]から[No.5])

ア.甲は、客観的にわいせつ性を有する書籍につき、その内容を確認して理解したものの、この程度では刑法上のわいせつな文書には該当しないと考え、同書籍を多数の者に販売した。この場合、甲にわいせつ物頒布罪は成立しない。[No.1]

イ.甲は、A方前路上に置かれていた自転車を、Aの所有物と認識して持ち去ったが、実際には同自転車は捨てられた物であり、誰の所有にも占有にも属さないものであった。この場合、甲に遺失物等横領罪が成立する。[No.2]

ウ.甲は、男性Aが、酩酊して暴れ回る女性Bを介抱するために取り押さえているのを見て、AがBに対し無理矢理わいせつ行為に及ぼうとしていると誤信し、Bを助けるため、自己の暴行の内容を認識しつつAに暴行を加え、傷害を負わせた。甲の暴行の程度が、甲が認識した急迫不正の侵害に対する防衛手段としての相当性を超えていた場合であっても、甲に傷害罪は成立しない。[No.3]

エ.甲は、乙に対し、A方に侵入して金品を窃取するように唆したところ、乙は、犯行を決意し、A方に侵入しようとしたが、施錠を解錠できず、犯行を断念した。帰路において、乙は、B方に侵入し、Bから金品を強取した。甲の教唆行為と乙のB方における住居侵入及び強盗との間に因果関係が認められない場合であっても、甲に住居侵入罪及び窃盗罪の教唆犯が成立する。[No.4]

オ.甲は、乙が窃取したバッグを、これが盗品かもしれないがそれでも構わないと思って購入した。この場合、甲に盗品等有償譲受け罪が成立する。[No.5]

  1. 1
  2. 2正解
  3. 1
  4. 2正解
  5. 1
  6. 2正解
  7. 1
  8. 2正解
  9. 1正解
  10. 2

正解: ア=2、イ=2、ウ=2、エ=2、オ=1

刑法総論 (故意・違法性阻却・共犯) と各論 (わいせつ物頒布・占有離脱物横領・盗品譲受) を横断する 5 記述独立判定問題。各肢で問われている論点は以下のとおり。

論点判定
規範的構成要件要素 (わいせつ性) の評価の錯誤2 (誤)
占有離脱物横領罪の客体 (無主物の扱い)2 (誤)
過剰の認識ある誤想過剰防衛と故意2 (誤)
教唆犯と因果関係2 (誤)
盗品等有償譲受罪の故意 (未必の故意)1 (正)

ア. 誤り (判定 = 2)

最大判昭32.3.13(チャタレイ事件) は、わいせつ文書頒布罪の犯意は「記載の存在の認識」と「頒布・販売の認識」があれば足り、当該文書がわいせつ性を具備するかどうかの認識は不要とした。主観的にわいせつ性を有しないと信じても、客観的にわいせつ性を有するなら法律の錯誤として犯意を阻却しないとも判示している。

「わいせつ」は規範的構成要件要素であり、行為者がその規範的評価を誤っても、それは事実の錯誤ではなく法律の錯誤 (刑法 38 条 3 項本文) として故意を阻却しない。本肢の甲は書籍の内容を確認・理解した上で「わいせつに該当しない」と評価したにすぎないから、わいせつ物頒布罪 (刑法 175 条) が成立する。「成立しない」とする本肢は誤りであり、解答は 2。

イ. 誤り (判定 = 2)

占有離脱物横領罪 (刑法 254 条) の客体は「遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物」である。捨てられた自転車は誰の所有にも占有にも属さない無主物であり、「他人の物」に該当しない。客観的構成要件を欠くから、主観的に「他人の物」と誤信していても本罪は成立しない (主観面が客観面を超えても、客体が存在しない以上は構成要件該当性を充足しない)。

なお、無主物は窃盗罪 (刑法 235 条) の「他人の財物」にも該当しないため、窃盗罪も成立しない。本肢は遺失物等横領罪が「成立する」と述べるが誤りであり、解答は 2。

ウ. 誤り (判定 = 2)

最決昭62.3.26(勘違い騎士道事件) は、急迫不正の侵害を誤信し、かつ防衛手段としての相当性を逸脱した行為について、誤想過剰防衛にあたるとして犯罪 (傷害致死罪) の成立を認め、刑法 36 条 2 項により刑を減軽した原判断を正当とした。

すなわち、過剰の事実を認識しながら防衛行為に及んだ誤想過剰防衛では、故意は阻却されず犯罪自体は成立し、刑法 36 条 2 項の任意的減免にとどまる。本肢の甲は、A による B への侵害という急迫不正の侵害を誤信したにとどまらず、自己の暴行の内容 (= 過剰の事実) を認識した上で A に暴行を加え傷害を負わせている。

したがって甲には傷害罪 (刑法 204 条) が成立する。「成立しない」とする本肢は誤りであり、解答は 2。

エ. 誤り (判定 = 2)

教唆犯 (刑法 61 条 1 項) が成立するには、教唆行為と被教唆者の実行行為との間に因果関係が必要である。被教唆者が教唆と独立に別個の犯罪を実行したにとどまる場合、教唆行為は当該犯罪の実現に寄与していないから教唆犯は成立しない。

本肢では、甲は乙に A 方への侵入窃盗を教唆したが、乙は A 方の解錠に失敗して犯行を断念し、帰路に別個独立に B 方で住居侵入・強盗に及んでいる。設問は「甲の教唆行為と乙の B 方における住居侵入及び強盗との間に因果関係が認められない場合」であることを明示的に前提としており、その前提下では甲に B 方住居侵入罪・窃盗罪の教唆犯は成立しない。

「因果関係が認められない場合であっても… 成立する」とする本肢は誤りであり、解答は 2。

オ. 正しい (判定 = 1)

最判昭23.3.16(賍物故買・未必の故意事件) は、賍物故買罪 (現行法の盗品等有償譲受罪、刑法 256 条 2 項) の故意について、買い受ける物が盗品であることを確定的に知る必要はなく、「盗品であるかも知れないと思いながら、しかも敢えてこれを買い受ける意思」(未必の故意) があれば足りるとした。

本肢の甲は、乙が窃取したバッグを「盗品かもしれないがそれでも構わない」と思って購入しており、未必の故意の典型例にあたる。したがって盗品等有償譲受罪が成立する。本肢は正しく、解答は 1。

結論

ア=2、イ=2、ウ=2、エ=2、オ=1。

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