〔第8問〕(配点:4)

公務執行妨害罪に関する次のアからオまでの各記述を判例の立場に従って検討し,正しい場合には1を,誤っている場合には2を選びなさい。(解答欄は,アからオの順に[No.10]から[No.14])

ア.甲は,市役所の生活保護係職員乙による生活保護に関する説明に不満を抱き,同人に罵声を浴びせながら抗議するとともに,丸めたパンフレットを同人の顔面付近に2,3回突き付け,そのうち1回はパンフレットの先端が同人の顎に触れ,さらに,約2回にわたり,乙が座っている椅子を両手で持って椅子の前脚を床から持ち上げては落とすことによりその身体を揺さぶった。甲の行為は,公務執行妨害罪にいう「暴行」に当たらないので,甲に公務執行妨害罪は成立しない。[No.10]

イ.甲は,警察官乙らが捜索差押許可状に基づき甲方の捜索に来た際,乙らにより甲方玄関ドアの鍵が開けられる前に,居室内にあった覚醒剤入りの注射器を足で踏み付けて壊した。甲の行為は,公務執行妨害罪にいう「暴行」に当たらないので,甲に公務執行妨害罪は成立しない。[No.11]

ウ.窃盗犯人甲は,その窃盗行為を目撃した制服警察官乙から追跡されている途中で,逮捕を免れるため,同人に対し,その反抗を抑圧するに足りる程度の暴行を加えて抵抗し,そのまま逃走した。甲には事後強盗罪のみが成立し,公務執行妨害罪は成立しない。[No.12]

エ.甲は,日本国内にある外国大使館の職員乙がその大使館の業務に従事していた際に,同人の顔面を殴った。乙は「公務員」に当たらないので,甲に公務執行妨害罪は成立しない。[No.13]

オ.甲は,税務調査を免れるため,同調査のため甲方に来た所轄税務署職員乙の顔面を殴った。その際,乙は,規則により調査時に携帯が義務付けられている検査章を携帯していなかったが,甲がその呈示を求めることはなかった。乙に規則違反があった以上,乙の調査は職務の権限外の行為であり,甲に公務執行妨害罪は成立しない。[No.14]

No.10

No.11

No.12

No.13

No.14