〔第20問〕(配点:4)
次の【事例】に関する後記アからオまでの各【記述】を判例の立場に従って検討し、正しい場合には1を、誤っている場合には2を選びなさい。(解答欄は、アからオの順に[No.32]から[No.36])
【事例】甲(女性、16歳)は、高校の同級生A(女性、16歳)が非行グループと交際し、飲酒喫煙を繰り返していることを知り、それらのAの具体的行動を、特に口止めもせずに同級生2名に告げたところ、同人らを介して、Aの同行動がクラスの全生徒30名の知るところとなった。甲のせいで自己の行状に関するうわさが広まったことを知ったAは、甲を呼び出して暴行を加えた。そのことを知った甲の兄乙は、Aに報復しようと考え、ある日の深夜、A宅付近に自己の車を停め、Aを待ち伏せていたところ、Aの姉B(20歳)がA宅に入ろうとするのを見て、BをAと誤信し、Bを無理やり同車のトランクに押し込んで数キロメートル走行した上、郊外の廃工場に連行した。乙は、上記廃工場において、Bの顔面を数発殴打するとともに、はさみを使ってBの頭髪を10センチメートル程度切断した。乙は、Bが泣き出したのを見て満足し、その場から立ち去ることにしたが、その際、Bのバッグの中から財布を抜き取り、これを持ち去った。乙は、上記財布内にB名義の運転免許証やキャッシュカードが入っていたため、BをAと間違えたことに気付いたが、同カードを不正に使用し、Bの預金で乙の友人Cへの借金を返済しようと考えた。乙は、コンビニエンスストアの現金自動預払機に同カードを挿入し、暗証番号としてBの誕生日を入力したところ、取引ができる状態になったので、その場で、同現金自動預払機を操作し、B名義口座から直接C名義口座へ50万円を送金した。その後、甲の交際相手丙は、乙が警察に逮捕されるのではないかと不安に思った甲からの依頼に応じ、乙の上記一連の犯行について、乙の身代わり犯人として警察に出頭した。
【記述】
ア.甲が、Aの上記行動を同級生2名に告げた行為は、特定かつ少数の者にAの名誉を毀損する事実を摘示したにすぎないことから、名誉毀損罪が成立することはない。[No.32]
イ.乙が、Bを無理やり自己の車のトランクに押し込み、上記廃工場に連行した行為は、Bを16歳の未成年者と誤信していたのであるから、生命身体加害目的略取罪ではなく未成年者略取罪が成立する。[No.33]
ウ.乙が、はさみを使ってBの頭髪を切断した行為は、人の生理的機能を損なうものではないから、傷害罪は成立せず暴行罪が成立するにとどまる。[No.34]
エ.乙が、B名義口座から直接C名義口座へ50万円を送金した行為は、実質的には預金の占有を移転させる行為であるから、窃盗罪が成立する。[No.35]
オ.丙が乙の身代わり犯人として警察に出頭した行為は、犯人の特定を誤らせることを通じて間接的に犯人の身柄確保を妨げるものにすぎないから、犯人隠避罪は成立せず、証拠偽造罪が成立する。[No.36]
No.32
No.33
No.34
No.35
No.36