〔第3問〕(配点:4)

承継的共犯に関する次の各【見解】についての後記アからオまでの各【記述】を検討し,正しい場合には1を,誤っている場合には2を選びなさい。(解答欄は,アからオの順に[№3]から[№7])

【見解】

A.共犯は,一個の犯罪を共同して行うものであり,後から犯罪に加担した者も,情を知って一罪の一部に加担した以上,犯罪全体について責任を負う。

B.共犯は,自己の行為と因果性がある範囲においてのみ責任を負うべきであって,自らが生じさせていない過去の事実について責任を負うべきではない。

C.先行者が生じさせた結果は承継しないが,先行者が生じさせた犯行を容易にする状態が存在する場合に,後行者がその状態を利用して犯罪を実現したときには,後行者も犯罪全体について責任を負う。

【記述】

ア.Aの見解に対しては,何を一罪として扱うかは,立法政策によって決まるため,一罪性に決定的な意味を認めるのは適切ではないとの批判が可能である。[№3]

イ.Aの見解は,共犯の処罰根拠に関する因果的共犯論に基づいて主張されるものである。[№4]

ウ.Bの見解に対しては,複数の行為からなる犯罪で後行行為だけでは処罰されない場合に,処罰の間隙が生じるとの批判が可能である。[№5]

エ.Cの見解に対しては,単なる憂さ晴らしにより他人に暴行を加えて抗拒不能状態にした後,財物奪取の意思が生じ,その状態を利用して同人から財物を奪取した場合,一般に強盗罪が成立しないとされていることとの比較から問題があるとの批判が可能である。[№6]

オ.甲がVに暴行を加えた後,なお強く抵抗するVに乙が甲と共謀の上で暴行を加え,Vが負傷したが,その傷害結果が共謀成立の前後いずれの暴行によって生じたかを特定できない場合,Cの見解からは,乙には傷害罪の承継的共犯は成立しないことになるのが自然であるが,この帰結は刑法第207条との関係で不均衡であるとの批判が可能である。[№7]

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№7