〔第9問〕(配点:2)
被害者の承諾に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものはどれか。(解答欄は,[№18])
№18
1.甲は,乙の承諾を得て,乙から借り受けた乙所有の重機を丙に転貸していたが,同重機の修理のため一時これを丙から預かった際,乙の承諾を得て,丙に無断で,自己の借金の返済として同重機を自己の債権者に譲渡した。この場合,甲には,横領罪が成立する。
2.甲は,自らが組長を務める暴力団の組員乙から,「暴力団を脱退したい。」との申出を受けたので,「落とし前として,指を詰めろ。」と言い,乙の承諾を得て,乙の右手小指の根元を出刃包丁で切断した。この場合,甲には,傷害罪は成立しない。
3.甲は,乙との不倫関係を清算しようと考え,真実は,乙と心中するつもりはないにもかかわらず,乙に対し,「あの世で一緒になろう。私も君の後を追って死ぬから。」と言って心中を持ちかけ,その旨誤信してこれを承諾した乙に毒薬を手渡したところ,乙がそれを飲んで死亡した。この場合,甲には,自殺関与罪が成立する。
4.甲は,知人乙から,「生活が苦しく刑務所に入りたいので,私から脅されたという事実をでっち上げて,私を告訴してほしい。」と依頼され,乙の承諾を得て,乙を脅迫罪で告訴した。この場合,甲には,虚偽告訴罪は成立しない。
5.甲は,自らが刑務官を務める刑務所で受刑中の成人女性乙と恋愛関係になり,乙の承諾を得て,勤務中,同刑務所内において,乙と性交した。この場合,甲には,特別公務員暴行陵虐罪が成立する。