〔第1問〕(配点:2)

公務員や未決拘禁者など,公権力との関係で特別な法律関係にある者の権利制約に関する次のアからウまでの各記述について,最高裁判所の判例の趣旨に照らして,正しいものには○,誤っているものには×を付した場合の組合せを,後記1から8までの中から選びなさい。(解答欄は,[No.1])

ア.多数の被拘禁者を外部から隔離して収容する施設では,施設内でこれらの者を集団として管理するに当たり,内部の規律及び秩序を維持し,その正常な状態を保持する必要があるから,この目的のため必要がある場合には,未決拘禁者についても,身体の自由やその他の行為の自由に一定の制限が加えられることはやむを得ない。

イ.刑事収容施設内において喫煙を許すことにより,罪証隠滅のおそれがあり,また火災発生により被拘禁者の逃走や人道上の重大事態の発生も予想される一方,たばこは生活必需品とまではいえず嗜好品にすぎないことからすれば,喫煙の自由が憲法の保障する人権に含まれるとしても,制限の必要性の程度と制限される基本的人権の内容,これに加えられる具体的制限の態様とを総合的に考慮すると,施設内における喫煙禁止は必要かつ合理的なものといえる。

ウ.職権行使の独立が保障され,単独で又は合議体の一員として司法権を行使する主体として,国に対する訴訟を含めて中立・公正な立場から裁判を行うことが強く期待される裁判官に対する政治運動禁止の要請は,議会制民主主義の政治過程を経て決定された政策を,政治的偏向を排し組織の一員として忠実に遂行すべき立場にある一般職の国家公務員に対する政治的行為の禁止の要請ほどには強くないというべきである。

No.1