〔第18問〕(配点:2)
強盗の罪に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものはどれか。(解答欄は,[No.30])
No.30
1.甲は,銭湯の脱衣場で窃盗をしようと考え,客の財布を手に取って在中する金額を確認中,その様子を目撃した乙から声を掛けられたため,逮捕を免れる目的で,乙に反抗を抑圧するに足りる程度の暴行を加えて加療約1か月間を要する傷害を負わせた。この場合,甲には,事後強盗罪及び強盗致傷罪が成立し,両罪は観念的競合となる。
2.甲は,電車内で寝ていた乙の財布を盗んで電車を降りたが,乙が目を覚まして追い掛けてきたため,逮捕を免れる目的で,乙に暴行を加えたところ,乙が転倒して重傷を負い,反抗が抑圧された状態に至った。この場合,甲の暴行の程度を問わず,甲には,強盗致傷罪が成立する。
3.甲は,留守宅に侵入して窃盗をしようと考え,金品を物色中に家人が帰ってきたら同人に反抗を抑圧するに足りる程度の脅迫を加えて逃げる意図でサバイバルナイフを携帯し,住宅街を徘徊して侵入に適した留守宅を探したが,これを発見できず,侵入を断念した。この場合,甲には,強盗予備罪が成立する。
4.甲は,窃盗の目的で乙宅に侵入し,金品を物色中,乙に発見されたため,この機会に乙に暴行を加えて金品を奪おうと考え,乙に反抗を抑圧するに足りる程度の暴行を加え,金品を奪った。この場合,甲には,事後強盗罪が成立する。
5.甲は,乙宅に侵入して財布を盗んだ後,誰にも発見されずに1キロメートル離れた公園へ移動して財布内の現金を確認した。しかし,甲は,その金額に満足せず再度乙宅で窃盗をしようと考え,乙宅を出た30分後に乙宅に戻り,その玄関扉を開けようとしたところ,帰宅していた乙に発見されたため,逮捕を免れる目的で,乙に反抗を抑圧するに足りる程度の暴行を加えた。この場合,甲には,事後強盗罪が成立する。