〔第13問〕(配点:2)

次の【事例】に関する後記アからオまでの各【記述】のうち,甲に殺人未遂罪の成立を認めるための論拠として適切なものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。(解答欄は,[No.23])

【事例】

甲は,知人の乙に,毒物を混入したワイン(以下「本件ワイン」という。)を送り付ければ,乙がそれを自ら飲んで死亡すると考えた。甲は,某日,本件ワインを宅配業者の事務所に持ち込み,3日後の配達指定をして,乙宅への配達を申し込んだ。しかし,本件ワインは,申込み当日,同事務所での保管中に瓶が破損して廃棄処分となったため,乙宅に配達されることはなかった。

【記述】

ア.間接正犯の実行の着手については,被利用者の行為を基準として実行の着手を判断すべきところ,本件では,それと同様の考え方が妥当する。

イ.結果発生の一定の蓋然性が生じれば,未遂犯の成立を認めることができるところ,我が国の一般的な宅配業務の実情を前提とした場合,本件ワインの配達を申し込んだ時点で乙宅に到着することはほぼ確実といえる。

ウ.実行の着手は,行為者が,その犯行計画上,構成要件実現のためになすべきことを行った時点で認めることができる。

エ.甲が,宅配業者に依頼せず,自ら乙宅に本件ワインを届けようとした場合には,乙宅に本件ワインを届けるまでは殺人未遂罪が成立しないこととの均衡を考慮する必要がある。

オ.既遂結果発生の時間的に切迫した危険を内容とする未遂結果は,刑法第43条の書かれざる構成要件要素である。

No.23