司法試験 / 刑法
2020年 司法試験 刑法 第1問 解説
- 殺人罪
- 共犯
- 判例
解説
AI 生成この解説は AI が生成したものです。誤りが含まれる可能性があるため、条文・判例などの一次資料を必ず確認のうえ、最終的な判断はご自身で行ってください。
▸問題と選択肢
〔第1問〕(配点:2)
次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものはどれか。(解答欄は,[No.1])
- 1.甲は,Xに対し,暴行や脅迫を用いて,自殺するように執拗に要求し,要求に応じて崖から海に飛び込んで自殺するしかないとの精神状態に陥らせた上で,Xを崖から海に飛び込ませて死亡させた。この場合,甲に,Xに対する殺人罪は成立しない。
- 2.甲は,追死する意思がないのにあるように装い,その旨誤信したXに心中を決意させた上で,毒物を渡し,それを飲み込ませて死亡させた。この場合,甲に,Xに対する殺人罪は成立しない。
- 3.甲は,財物を奪取するために,当該財物の占有者Xに対し,反抗を抑圧するに足りる程度の暴行や脅迫を用いて,当該財物を差し出すしかないとの精神状態に陥らせた上で,当該財物を差し出させた。この場合,甲に,Xに対する強盗罪は成立せず,窃盗罪の間接正犯が成立する。
- 4.甲は,日頃から暴行を加えて自己の意のままに従わせて万引きをさせていた満12歳の実子Xに対し,これまでと同様に万引きを命じて実行させた。この場合,Xが是非善悪の判断能力を有する者であれば,甲に,窃盗罪の間接正犯は成立せず,Xとの間で同罪の共同正犯が成立する。
- 5.甲は,Xが管理する工事現場に保管されている同人所有の機械を,同人に成り済まして,甲をXであると誤信した中古機械買取業者Yに売却し,同人に同機械を同所から搬出させた。この場合,甲に,Xに対する窃盗罪の間接正犯が成立する。正解
正解: 5
間接正犯の成立要件 (被害者・被利用者の意思支配 / 故意なき道具) と、強盗罪 (刑法 236 条) と窃盗罪 (刑法 235 条) の構成要件区別を問う設問。
1. 誤り。暴行・脅迫により被害者を意思決定の自由を奪われた状態に陥らせ、自殺するしかない精神状態にして崖から飛び込ませた事案について、最決平成16.1.20(保険金目的海中飛込み事件) は、被害者を道具として利用したものとして殺人罪 (未遂) の成立を認めた。同判例は実行行為性を認めた事案であり、結果が現実化した本肢では既遂となる。すなわち刑法 199 条 の殺人罪が成立し、「殺人罪は成立しない」とする本肢は誤り。
2. 誤り。追死意思がないのにあるように装って被害者を欺き、自殺させた事案について、最判昭和33.11.21(偽装心中事件) は、被害者の自殺意思は真意に基づかず 刑法 202 条 の同意 (承諾) としては認められないとし、通常の殺人罪 (刑法 199 条) が成立するとした。
3. 誤り。刑法 236 条 1 項は「暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者」を強盗罪とし、ここでの暴行・脅迫は判例上「反抗を抑圧するに足りる程度」のものを意味するとされる 1。本肢はまさにこの要件を充たすので強盗罪が成立し、窃盗罪の間接正犯にとどまるとする評価は誤り。
4. 誤り。日頃の暴行で意思を抑圧された 12 歳の被利用者を利用して窃盗を行わせた事案について、最決昭和58.9.21(12歳養女窃盗事件) は、被利用者が是非善悪の判断能力を有していたとしても利用者に窃盗罪 (刑法 235 条) の間接正犯が成立するとした。判例の射程の核心は被利用者の意思抑圧であって、是非弁別能力の有無ではない。
5. 正しい。X 所有の機械を、所有者を僭称して中古機械買取業者 Y に売却し、Y に搬出させた事案。Y は甲を真の所有者と誤信して機械を搬出しており、窃盗の故意を欠く「故意なき道具」として利用されている 2。甲は自らの占有移転行為を Y を介して実現しており、X の占有を侵害する 刑法 235 条 の窃盗罪の間接正犯が成立する。なお Y に対する詐欺罪の成否は X に対する窃盗罪とは別論点である。
よって正解は 5。
Footnotes
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Wikipedia「強盗罪」 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BC%B7%E7%9B%97%E7%BD%AA ; Wikibooks「刑法第236条」 https://ja.wikibooks.org/wiki/%E5%88%91%E6%B3%95%E7%AC%AC236%E6%9D%A1 ↩
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Wikipedia「間接正犯」 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%96%93%E6%8E%A5%E6%AD%A3%E7%8A%AF ; Wikipedia「故意ある道具」 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%95%85%E6%84%8F%E3%81%82%E3%82%8B%E9%81%93%E5%85%B7 ; Wikibooks「刑法第235条」 https://ja.wikibooks.org/wiki/%E5%88%91%E6%B3%95%E7%AC%AC235%E6%9D%A1 ; ベリーベスト法律事務所「間接正犯とは?成立する要件と、共同正犯・教唆犯との違い」 https://keiji.vbest.jp/columns/g_other/5728/ ↩