司法試験 / 刑法
2020年 司法試験 刑法 第14問 解説
- 放火罪
- 判例
解説
AI 生成この解説は AI が生成したものです。誤りが含まれる可能性があるため、条文・判例などの一次資料を必ず確認のうえ、最終的な判断はご自身で行ってください。
▸問題と選択肢
〔第14問〕(配点:3)
放火罪に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものを2個選びなさい。(解答欄は,[No.24],[No.25]順不同)
- 1.甲が自己の所有する空き家に放火したが,公共の危険が生じなかった場合,甲には,非現住建造物等放火未遂罪が成立する。
- 2.甲が乙に頼まれて,乙所有の大型家具を,丙が居住する家屋に近接する甲所有の畑地で燃やし始めたところ,周辺に火の粉が飛び散り,予期に反して,同家屋の屋根のひさしに飛び火して,同ひさしを焼損させたところで火が消し止められた場合,甲には,延焼罪が成立する。正解
- 3.甲が住宅内にいる乙を殺害する目的で放火し,住宅が焼失した上,乙が死亡した場合,甲には,殺人罪は成立せず,現住建造物等放火罪のみが成立する。
- 4.甲が,一部の部屋のみが現に住居に使用されている木造の集合住宅の空き部屋に放火し,同室のみを焼損させた場合,甲には,現住建造物等放火罪が成立する。正解
- 5.甲が憂さ晴らしの目的で,甲の世帯を含めて計30世帯が居住するマンション内部に設置されたエレベーターのかご内に,灯油を染み込ませて点火した新聞紙を投げ入れて放火したが,エレベーターのかごの側壁を焼損したにとどまり,住居部分には延焼しなかった場合,甲には,現住建造物等放火未遂罪が成立する。
正解: 2 と 4
放火罪の構成要件 (刑法 108 条 / 刑法 109 条 / 刑法 111 条) と現住建造物の一体性、放火と殺人の罪数、エレベーター焼損の既遂時期に関する判例知識を問う設問。
1. 誤り。自己所有の非現住建造物に放火した場合、刑法 109 条 2 項は「公共の危険を生じなかったときは、罰しない」と規定する。また、109 条 2 項の罪は未遂処罰規定を欠く (112 条は 108 条と 109 条 1 項のみを未遂処罰の対象とする) 1。本肢は公共の危険が生じていない以上、そもそも犯罪が成立せず、非現住建造物等放火未遂罪は成立しない。
2. 正しい。乙所有の大型家具は 刑法 109 条 1 項・110 条 1 項の客体に該当しない物であり、これを甲所有の畑地で燃やしたところ予期に反して隣家屋根のひさし (= 現住建造物の一部) に飛び火・焼損させた事案である。刑法 111 条 は「109 条 1 項・110 条 1 項以外の物を過失により焼損し、それによって 108 条または 109 条 1 項に規定する物に延焼させた者」を処罰するから、本肢では延焼罪 (過失による延焼罪) が成立する 2。
3. 誤り。住宅内の人を殺害する目的で住宅に放火し焼失・死亡の結果を生じさせた場合、判例・通説は、放火罪 (刑法 108 条) と殺人罪は保護法益を異にする別個の犯罪であり、両者は観念的競合 (刑法 54 条 1 項前段) として共に成立すると解する 3。「殺人罪は成立せず、現住建造物等放火罪のみが成立する」とする本肢は誤り。
4. 正しい。判例は、複数の部屋からなる集合住宅で構造上・機能的に一体性が認められる場合、建物全体を一個の現住建造物と扱う。最決平成元.7.14(平安神宮事件) は、本殿・拝殿・社務所等が廻廊で接続され夜間も神職が宿直していた平安神宮社殿につき、全体として一個の現住建造物に当たると判示しており、同様の射程で集合住宅も整理される 4。木造の集合住宅で一部の部屋が現に住居として使用されている以上、空き部屋のみを焼損した場合でも現住建造物等放火罪が成立する。
5. 誤り。最決平成元.7.7(マンションエレベーター放火事件) は、マンション内部のエレベーターのかご内に放火してかごの側壁の一部を焼損した行為につき、住居部分への延焼がなくとも現住建造物等放火罪 (刑法 108 条) の 既遂 が成立すると判示した。エレベーターのかごはマンション (= 現住建造物) の一部を構成し、その側壁の焼損で「焼損」要件を満たすからである。本肢の「未遂罪が成立する」は誤り。
よって正しいのは 2 と 4。
Footnotes
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Wikibooks「刑法第109条」 https://ja.wikibooks.org/wiki/%E5%88%91%E6%B3%95%E7%AC%AC109%E6%9D%A1 ↩
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Wikibooks「刑法第111条」 https://ja.wikibooks.org/wiki/%E5%88%91%E6%B3%95%E7%AC%AC111%E6%9D%A1 ↩
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Wikipedia「放火罪」 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%94%BE%E7%81%AB%E7%BD%AA ↩
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Wikibooks「刑法第108条」 https://ja.wikibooks.org/wiki/%E5%88%91%E6%B3%95%E7%AC%AC108%E6%9D%A1 ↩