司法試験 / 刑法
2019年 司法試験 刑法 第10問 解説
- 刑法各論
- 判例
解説
AI 生成この解説は AI が生成したものです。誤りが含まれる可能性があるため、条文・判例などの一次資料を必ず確認のうえ、最終的な判断はご自身で行ってください。
▸問題と選択肢
〔第10問〕(配点:2)
公務員職権濫用罪に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,誤っているものはどれか。(解答欄は,[№19])
- 1.公務員職権濫用罪の成立には,必ずしも職権行使の相手方の意思に直接働きかけ,それを制圧することまで要しない。
- 2.公務員職権濫用罪の成立には,必ずしも公務員の不法な行為が職務としてなされることまで要しない。
- 3.公務員職権濫用罪にいう「職権」は,必ずしも法律上の強制力を伴うことまで要しない。
- 4.公務員職権濫用罪にいう「職権」は,職権行使の相手方に対し,必ずしも法律上又は事実上の負担や不利益を生ぜしめるに足りる特別の職務権限であることまで要しない。正解
- 5.公務員職権濫用罪にいう「権利の行使を妨害した」の「権利」は,必ずしも法律に明記されたものであることを要しない。
問題のリキャップ
刑法 193 条 公務員職権濫用罪に関する 5 つの記述から、判例の立場で 誤っているもの 1 個を選ぶ問題。本罪の「職権」については、判例上限定的に解釈されると整理されており、その射程の取り方が問われる。
正解: 4
1. 正しい: 相手方意思の制圧までは不要
公務員職権濫用罪の成立には、相手方の意思を直接制圧する必要はなく、職権を濫用して義務のないことを行わせ、または権利の行使を妨害する行為があれば足りる (最決昭57.1.28 とされる古典判例の射程)1。本肢は「制圧することまで要しない」と述べており、判例の立場と整合。
2. 正しい: 形式上「職務として」なされる必要なし
職権濫用罪は、公務員が職権を濫用する形で行われれば足り、当該不法行為が形式上「職務として」遂行されたか否かでは決まらない。むしろ 最決平元.3.14 が 「警察官が職務として行ったものであっても、終始警察官でないことを装ってした電話盗聴行為は、職権を濫用して行ったものとはいえず、公務員職権濫用罪を構成しない」 と判示したことからも、「職務として」の有無が成立可否を直接決めるわけではないことが裏返しに示されている。職権濫用の実体があれば成立し得る一方、職務遂行形式があっても職権濫用がなければ不成立となる。
3. 正しい: 「職権」に法律上の強制力は不要
職権濫用罪の「職権」は、必ずしも法律上の強制力を伴うものに限定されない (最決昭57.1.28 等とされる射程)1。事実上の影響力を持つ職権 (たとえば裁判官が職務上の地位を利用して刑務所長に身分帳簿の閲覧をさせる事例) でも対象となり得るとされる。
4. 誤り: 「職権」は特別の職務権限であることを要する
最決平元.3.14 は、職権濫用罪の「職権」について、公務員の一般的職務権限のすべてを指すのではなく、それを行使することにより相手方に対して「法律上または事実上の負担や不利益を生ぜしめるに足りる特別の職務権限」 を指すと限定的に解釈した2。
本肢は、職権について「相手方に対し、法律上又は事実上の負担や不利益を生ぜしめるに足りる特別の職務権限であることまで要しない」と述べているが、これは判例が要求する要件をまさに 不要としている 点で、判例の立場と正反対である。よって本肢は誤り。
5. 正しい: 「権利」は法律明記のものに限られない
刑法 193 条 の「権利の行使を妨害した」の「権利」は、判例・通説上、必ずしも法律に明記されたものに限定されず、法律上または事実上保護される利益を含むと解される。本肢は判例・通説と整合。
よって誤っているのは 肢 4。正解は 4。
Footnotes
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最決昭57.1.28 は、裁判官が刑務所長に対し職務上の地位を背景として元被告人の身分帳簿の閲覧・謄写を求めた事案で、公務員職権濫用罪における「職権」の射程 (法律上の強制力を要しない / 相手方の意思の直接制圧を要しない) を確立したとされる古典判例。courts.go.jp 一次情報 (判決原文 URL) が本稿執筆時点で特定できず判例 DB 未登録。Wikipedia「公務員職権濫用罪」 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%AC%E5%8B%99%E5%93%A1%E8%81%B7%E6%A8%A9%E6%BF%AB%E7%94%A8%E7%BD%AA および 横浜ロード法律事務所「公務員職権濫用罪」 https://www.yokohama-roadlaw.com/glossary/cat/post_421.html が判旨内容を整理しており、複数二次資料で年月日 (昭和57年1月28日)・出典 (刑集36巻1号1頁とされる)・判旨が一致。courts.go.jp で原文 URL が確定したら別途 add-precedent 予定。 ↩ ↩2