司法試験 / 刑法
2019年 司法試験 刑法 第8問 解説
- 放火罪
- 判例
解説
AI 生成この解説は AI が生成したものです。誤りが含まれる可能性があるため、条文・判例などの一次資料を必ず確認のうえ、最終的な判断はご自身で行ってください。
▸問題と選択肢
〔第8問〕(配点:3)
放火罪に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,誤っているものを2個選びなさい。(解答欄は,[№16],[№17]順不同)
- 1.「建造物」とは,家屋その他これに類する工作物であって,土地に定着し,人の起居出入りに適する構造を有するものをいい,毀損しなければ家屋から取り外すことができない状態にある雨戸は,「建造物」の一部に当たる。
- 2.「放火」とは,目的物の焼損を惹起させる行為をいい,目的物への直接的な点火行為に限られず,媒介物への点火行為であっても,その燃焼作用が継続して目的物に延焼し得るものである場合,「放火」に当たる。
- 3.「焼損」とは,火力により目的物の重要部分が焼失し,その本来の効用が失われた状態をいい,不燃性の建造物のコンクリート壁が媒介物の火力によって崩落した場合,「焼損」に当たる。正解
- 4.建造物等以外放火罪にいう「公共の危険」は,現住建造物等放火罪や他人所有非現住建造物等放火罪の客体である建造物等に対する延焼の危険に限られず,不特定又は多数の人の生命,身体又は前記建造物等以外の財産に対する危険も含まれる。
- 5.現住建造物等放火罪にいう「現に人が住居に使用し」の「人」には犯人が含まれるが,「現に人がいる」の「人」には犯人が含まれない。正解
問題のリキャップ
放火罪の構成要件 (建造物の一部・放火・焼損・公共の危険・「人」の範囲) について判例の立場と整合するかを 1 肢ずつ検討する。
正解: 3 と 5 (誤り)
1. 正しい: 雨戸は建造物の一部
「建造物」とは、家屋その他これに類する工作物で、土地に定着し、人の起居出入りに適する構造を有するものをいう。建造物の一部に当たるか否かは 毀損しなければ取り外せない構造部分か で判断するのが判例・通説であり、毀損なしに家屋から取り外せない状態の雨戸は建造物の一部となる。本肢はこの判断枠組みをそのまま述べたもので、正しい。
2. 正しい: 媒介物への点火も放火
刑法 108 条 以下の「放火」は、目的物の焼損を惹起させる行為をいう。独立燃焼説に立つ通説的整理では、目的物に直接点火する場合に限らず、媒介物 (新聞紙・カーテン・可燃性液体等) への点火であっても、その燃焼作用が継続して目的物に延焼し得るものであれば「放火」に当たると解されている。本肢は正しい。
3. 誤り: コンクリート壁の崩落は「焼損」ではない
判例の「焼損」概念は 独立燃焼説 に立つ。すなわち、火が媒介物を離れて目的物自体において独立に燃焼を継続する状態に至った時点で焼損となる。最決平元.7.7 は、耐火構造の集合住宅のエレベーターかご内側鋼板にライター油をかけて点火し側壁の一部を燃焼させた事案で、火が独立して燃焼を継続する状態に至った時点で焼損を認めた1。
これに対し本肢は、不燃性建造物のコンクリート壁が 媒介物の火力で崩落 した場合に「焼損」に当たるとする。しかし崩落は建物の効用喪失という結果に着目した記述であって、火が建物本体において独立燃焼に至っているかを問うていない。判例の独立燃焼説からは、媒介物の火力でコンクリート壁が崩落しただけでは焼損とはいえない (効用喪失自体に着目する効用喪失説は学説として存在するが、判例の立場ではない)。よって本肢は判例の立場と矛盾し、誤り。
4. 正しい: 「公共の危険」は建造物等への延焼に限られない
刑法 110 条 1 項の建造物等以外放火罪における「公共の危険」について、最決平15.4.14 は、刑法 108 条・刑法 109 条 1 項の客体である建造物等への延焼の危険に限定されず、不特定または多数の人の生命・身体または建造物等以外の財産に対する危険 も含まれると判示した2。本肢は同決定の判旨をそのまま述べたもので、正しい。
5. 誤り: 「住居使用」「現に人がいる」のいずれの「人」も犯人を含まない
刑法 108 条 の「現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物」の「人」には、判例・通説上、いずれの「人」にも犯人は含まれない。犯人のみが住む家屋・犯人のみがいる家屋は現住建造物等放火罪の客体ではなく、刑法 109 条 の非現住建造物等放火罪の問題となる。
本肢は「住居使用」の「人」には犯人を含み、「現にいる」の「人」には犯人を含まないと両者の扱いを分けている点で判例・通説に反する。よって誤り。
よって誤っているのは 肢 3 と肢 5。正解は 3 と 5。