司法試験 / 刑法
2019年 司法試験 刑法 第16問 解説
- 詐欺罪
- 判例
解説
AI 生成この解説は AI が生成したものです。誤りが含まれる可能性があるため、条文・判例などの一次資料を必ず確認のうえ、最終的な判断はご自身で行ってください。
▸問題と選択肢
〔第16問〕(配点:2)
次のアからオまでの各【記述】を判例の立場に従って検討した場合,後記の各【結論】との組合せとして正しいものは,後記1から5までのうちどれか。なお,【結論】の詐欺罪には詐欺未遂罪も含むものとする。(解答欄は,[№27])
【記述】
ア.他人のためにその事務を処理する者が,任務に背いて,その他人を欺く行為をし,同人を錯誤に陥らせて財物を交付させた。
イ.他人を恐喝するに際して,脅迫文言の中に虚偽の部分があり,それも同人に畏怖の念を生じさせる一材料となって,その畏怖の結果として,同人に財物を交付させた。
ウ.新聞販売店から集金業務を委託されている集金員が,集金した購読料を同店に持ち帰らずに自己の用途に費消するつもりであるのに,これを秘して,正規の手続や方式に従って購読者から購読料を集金し,自己の遊興費に費消した。
エ.保険金を詐取する目的で,火災保険の付された自己所有の家屋に放火した。
オ.他人に売買代金として偽造通貨を行使し,同人を錯誤に陥らせて財物を交付させた。
【結論】
Ⅰ.詐欺罪のみが成立し得る。
Ⅱ.詐欺罪と他の罪の双方が成立し得る。
Ⅲ.詐欺罪は成立しない。
- 1.アⅠ-イⅡ
- 2.アⅡ-ウⅢ
- 3.イⅢ-エⅢ正解
- 4.ウⅡ-オⅡ
- 5.エⅡ-オⅢ
問題のリキャップ
5 つの事案について、詐欺罪 (刑法 246 条) との関係を 3 つの結論 (Ⅰ詐欺罪のみ成立 / Ⅱ詐欺罪と他罪の双方成立 / Ⅲ詐欺罪不成立) のいずれに当てはめるか組み合わせる。
正解: 3 (イⅢ。 エⅢ)
各記述の判定
ア. 任務に背いて他人を欺き財物交付 → Ⅰ (詐欺罪のみ)
事務処理者が任務に背いて本人を欺き財物を交付させた場合、行為は詐欺罪 (刑法 246 条 1 項) と背任罪 (刑法 247 条) の両構成要件に形式的に触れるが、判例 (大判昭7.6.29 等の古典判例とされる整理) は 詐欺罪が成立する場合は背任罪は別途成立しない (法条競合) とする。財物を欺取する行為としての構造が、信任関係違背の側面より重く評価されるためである。よって 詐欺罪のみが成立し得る = Ⅰ。
イ. 恐喝の脅迫文言中に虚偽の部分があり畏怖の結果として財物交付 → Ⅲ (詐欺罪不成立)
畏怖の結果として財物を交付させているので、主たる因果は 脅迫 → 畏怖 → 交付 であり、恐喝罪 (刑法 249 条) が成立する。脅迫文言中の虚偽部分は畏怖の一材料にすぎず、独立に「欺罔 → 錯誤 → 交付」の因果経路を構成しない。判例 (最判昭24.2.8 等) はこのような場合に詐欺罪は別途成立せず、恐喝罪のみ が成立するとする。よって詐欺罪は成立しない = Ⅲ。
ウ. 集金員が費消する意思を秘して正規の手続で集金 → Ⅲ (詐欺罪不成立)
集金員は新聞販売店から集金業務を委託されており、購読者から見れば 正当な代金請求権者 である。正規の手続・方式で購読者から購読料を集金している以上、購読者は払うべきものを払ったにすぎず、欺罔行為は認められない。集金員が事後に費消する意思を持っていたとしても、判例 (大判昭8.10.18 等の古典判例とされる整理) は購読者との関係では詐欺罪は成立せず、業務上横領罪 (刑法 253 条) の問題となるとする。よって詐欺罪は成立しない = Ⅲ。
エ. 保険金詐取目的で自己所有家屋に放火 → Ⅲ (詐欺罪不成立)
保険金詐取目的で放火したとしても、放火の段階では保険会社に対する欺罔行為に着手していない。判例は詐欺罪 (および詐欺未遂罪) の成立に 保険会社に対する保険金請求行為 など欺罔の実行着手を要するとし、放火だけでは詐欺の予備にとどまるとする (詐欺の予備罪は規定なし)。よって放火罪 (刑法 109 条 1 項) のみが成立し、詐欺罪は成立しない = Ⅲ。
オ. 偽造通貨を行使して財物交付 → 判例の立場では Ⅲ (詐欺罪不成立)
偽造通貨を真貨と偽って財物を交付させる行為は、偽造通貨行使罪 (刑法 148 条 2 項) と詐欺罪 (刑法 246 条 1 項) の双方の構成要件を形式的に充足する。もっとも、判例 (大判明治43.6.30 とされる古典判例) は、財物領得の所為は偽造通貨行使の所為中に包含され別に犯罪を構成しないとし、詐欺罪は偽造通貨行使罪に吸収される (吸収関係 = 包括一罪) とする1。本問は「判例の立場に従って検討」する以上、オは判例の吸収説に従えば Ⅲ (詐欺罪不成立) と整理するのが筋。なお両罪成立 + 観念的競合とする学説もあり、その立場では Ⅱ (双方成立) となる。
選択肢の照合
| 肢 | 組合せ | 判定 |
|---|---|---|
| 1 | ア Ⅰ - イ Ⅱ | ア ○、イ × (Ⅲ) → ✗ |
| 2 | ア Ⅱ - ウ Ⅲ | ア × (Ⅰ)、ウ ○ → ✗ |
| 3 | イ Ⅲ - エ Ⅲ | 両方 ○ |
| 4 | ウ Ⅱ - オ Ⅱ | ウ × (Ⅲ) → ✗ (オは判例の吸収説では Ⅲ、両罪成立説では Ⅱ で位置付けが分かれる) |
| 5 | エ Ⅱ - オ Ⅲ | エ × (Ⅲ) → ✗ (オは判例の吸収説では Ⅲ で適切) |
肢 4・肢 5 のオの判定は学説対立で揺れるが、ア〜エの判定が確定する以上、肢 3 のみが両 slot で確実に成立する。よって正解は 3。
Footnotes
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大判明治43.6.30 (刑録16輯1272頁) とされる古典判例は courts.go.jp 一次情報 (URL) が本稿執筆時点で特定できず判例 DB 未登録。判旨内容は加藤ゼミナール「罪数処理マニュアル」 https://kato-seminar.jp/exam/170362/ および Wikipedia 通貨偽造の罪 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%80%9A%E8%B2%A8%E5%81%BD%E9%80%A0%E3%81%AE%E7%BD%AA で「偽造銀行券を行使して財物を不正に領得した行為は、銀行券行使の所為中に包含され別に犯罪を構成しない」と整理され、両ソースで判旨内容が一致。courts.go.jp で原文 URL が確定したら別途 add-precedent 予定。 ↩