司法試験 / 刑法
2019年 司法試験 刑法 第3問 解説
- 共犯
解説
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▸問題と選択肢
〔第3問〕(配点:4)
承継的共犯に関する次の各【見解】についての後記アからオまでの各【記述】を検討し,正しい場合には1を,誤っている場合には2を選びなさい。(解答欄は,アからオの順に[№3]から[№7])
【見解】
A.共犯は,一個の犯罪を共同して行うものであり,後から犯罪に加担した者も,情を知って一罪の一部に加担した以上,犯罪全体について責任を負う。
B.共犯は,自己の行為と因果性がある範囲においてのみ責任を負うべきであって,自らが生じさせていない過去の事実について責任を負うべきではない。
C.先行者が生じさせた結果は承継しないが,先行者が生じさせた犯行を容易にする状態が存在する場合に,後行者がその状態を利用して犯罪を実現したときには,後行者も犯罪全体について責任を負う。
【記述】
ア.Aの見解に対しては,何を一罪として扱うかは,立法政策によって決まるため,一罪性に決定的な意味を認めるのは適切ではないとの批判が可能である。[№3]
イ.Aの見解は,共犯の処罰根拠に関する因果的共犯論に基づいて主張されるものである。[№4]
ウ.Bの見解に対しては,複数の行為からなる犯罪で後行行為だけでは処罰されない場合に,処罰の間隙が生じるとの批判が可能である。[№5]
エ.Cの見解に対しては,単なる憂さ晴らしにより他人に暴行を加えて抗拒不能状態にした後,財物奪取の意思が生じ,その状態を利用して同人から財物を奪取した場合,一般に強盗罪が成立しないとされていることとの比較から問題があるとの批判が可能である。[№6]
オ.甲がVに暴行を加えた後,なお強く抵抗するVに乙が甲と共謀の上で暴行を加え,Vが負傷したが,その傷害結果が共謀成立の前後いずれの暴行によって生じたかを特定できない場合,Cの見解からは,乙には傷害罪の承継的共犯は成立しないことになるのが自然であるが,この帰結は刑法第207条との関係で不均衡であるとの批判が可能である。[№7]
- 1正解
- 2
- 1
- 2正解
- 1正解
- 2
- 1正解
- 2
- 1正解
- 2
問題のリキャップ
承継的共犯の三説 (A説 (全面肯定説)・B説 (全面否定説)・C説 (中間説 / 積極的利用説)) に対する批判の当否を問う学説問題。各見解の理論的基礎と帰結を正確に押さえているかが鍵になる。
正解: ア=1, イ=2, ウ=1, エ=1, オ=1
三説の整理
- A説 (全面肯定説): 一罪は分割不可能な一個の犯罪であり、情を知って一罪の一部に加担した以上、後行者は犯罪全体について責任を負う。完全犯罪共同説 (一罪不可分性論 / 全体的考察) に立脚する見解1。
- B説 (全面否定説): 共犯の処罰根拠を自己の行為の因果性のみに求める 因果的共犯論 から出発し、自らが生じさせていない過去の事実については責任を負わない2。
- C説 (中間説 / 積極的利用説): 先行者が生じさせた結果そのものは承継しないが、先行者が作出した「犯行を容易にする状態」を後行者が積極的に利用して犯罪を実現した場合には、全体について責任を負う1。
ア (正しい)
A説は「一個の犯罪は分割不可能」という一罪性に依拠して全部承継を導く。しかし、何を一罪として括るか (例えば強盗罪のように暴行と財物奪取を一つの犯罪類型に組み立てるか、暴行罪と窃盗罪の併合に分解するか) は 立法政策 によって決まる事柄である。立法者の構成のしかたに後行者の責任範囲が左右されるのは不合理であり、一罪性に決定的な意味を持たせる A 説への批判として成立する。よって正しい。
イ (誤り)
A説は前述のとおり 完全犯罪共同説 / 一罪不可分性論 に基礎を置く見解であり、因果的共犯論ではない1。むしろ因果的共犯論を徹底すると、自らの行為と因果性のない過去の事実には責任を負えないという結論になり、これは B説の理論的基礎 にあたる2。A 説を「因果的共犯論に基づく」とする本記述は、理論的基礎を取り違えており誤り。
ウ (正しい)
B説は自己の行為と因果性のある範囲でしか責任を負わせないため、強盗罪のように 暴行と財物奪取という複数行為を結合した犯罪類型 において、後行者が財物奪取にのみ関与した場合、後行行為単独では強盗罪が成立せず、せいぜい窃盗罪に留まることになる。先行者の暴行を利用して財物を奪取したという実質を捉えきれず、処罰の間隙 が生じる。これは B 説に向けられる代表的な批判であり、正しい。
エ (正しい)
判例・通説では、行為者がもっぱら 憂さ晴らし の意思で暴行を加えて被害者を抗拒不能状態に陥らせた後、財物奪取の意思を生じさせて当該状態を利用し財物を奪取した場合、新たな暴行・脅迫を加えて財物を奪取しない限り、強盗罪は成立せず窃盗罪 (場合により別途暴行罪) に留まる。刑法 236 条 1 項が暴行・脅迫を強盗の 手段 と位置付けていることからの帰結であり、すでに作出された抗拒不能状態の単なる利用では「手段としての暴行・脅迫」が欠けるためである。
ところが C 説によれば、他人 (先行者) が作出した 抗拒不能状態を後行者が利用して財物を奪取した場合には、犯行容易化状態の積極的利用として強盗罪の全部承継を認めることになる。自己の暴行で生じさせた状態を自ら利用する場面では強盗罪を否定するのに、他人が作出した状態を利用した方がかえって重く扱われるという 均衡を欠く帰結 が生じる。C 説への批判として成立し、正しい。
オ (正しい)
設例は、甲の暴行 → 乙が共謀加担 → 乙も暴行 → V 負傷、という流れで、傷害結果が共謀成立の前後いずれの暴行から生じたか特定できないというもの。
C 説からは、共謀後の乙の暴行と傷害結果との因果関係が証拠上特定できない以上、後行者の行為に因果性のある結果として傷害を帰責できず、また先行する甲の暴行による傷害結果そのものは承継しないため、乙に傷害罪の承継的共犯は成立しない とするのが自然な帰結となる。
しかし 刑法 207 条 は、二人以上の暴行による傷害について軽重・因果関係が不明な場合に、「共同して実行した者でなくても、共犯の例による」 として同時傷害の特例を定める。共謀すらない同時暴行者についてさえ傷害結果の帰責を認めるのに、共謀まで成立している後行者 の方がかえって傷害罪を免れるという結論になり、明らかに不均衡である。C 説への批判として成立し、正しい。
以上より、ア=1・イ=2・ウ=1・エ=1・オ=1。