司法試験 / 刑法
2019年 司法試験 刑法 第13問 解説
- 窃盗罪
- 構成要件
解説
AI 生成この解説は AI が生成したものです。誤りが含まれる可能性があるため、条文・判例などの一次資料を必ず確認のうえ、最終的な判断はご自身で行ってください。
▸問題と選択肢
〔第13問〕(配点:2)
学生A,B及びCは,次の【事例】における窃盗罪の実行の着手時期について,後記【会話】のとおり議論している。【会話】中の①から⑥までの()内から適切なものを選んだ場合,正しいものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。(解答欄は,[№23])
【事例】
甲は,X宅のタンスに宝石が保管されていることを知ったため,その宝石を窃取する目的で,X宅に玄関から侵入し,宝石が保管されているタンスの在りかを探し始めて,それが置かれていた居間に立ち入ろうとしたところ,居間から出てきたXと鉢合わせとなり,取り押さえられた。
【会話】
学生A.私は,甲がX宅に侵入した時点で窃盗罪の実行の着手を認めてよいと思います。この時点で,①(a.犯意の飛躍的表動があった・b.法益侵害の危険が飛躍的に高まった)といえるからです。
学生B.A君は,犯罪を行為者の危険な性格の発現であると考えているのですね。私は,実行の着手の「実行」とは構成要件該当行為のことで,「着手」とはそれを開始することだと解するので,【事例】では,窃盗罪の実行の着手は,②(c.認められない・d.居間に立ち入ろうとした時点で認められる)と考えます。
学生A.B君の見解に対しては,実行の着手時期が③(e.不明確になる・f.遅くなり過ぎる)との批判がありますね。
学生C.私は,実行の着手時期とは,未遂犯の成立時期のことであるので,未遂犯の処罰根拠に遡り,実質的に考えることが必要だと思います。そのため,窃盗罪の実行の着手時期は,④(g.占有侵害の現実的危険性が発生した・h.窃取行為と密接に関連する行為を開始した)時点だと解するので,【事例】では,窃盗罪の実行の着手は,⑤(i.認められない・j.X宅内でタンスの在りかを探し始めた時点で認められる)と考えます。この点,B君の見解を修正し,実行の着手時期を⑥(k.占有侵害の現実的危険性が発生した・l.窃取行為と密接に関連する行為を開始した)時点とする見解もありますが,この見解に対しては,形式面を重視すると言いながら,結局,実質的な観点を取り入れているとの批判があります。
- 1.①a⑥k
- 2.②c④h
- 3.②d⑤i
- 4.③f⑥l正解
- 5.④g⑤j
問題のリキャップ
窃盗罪 (刑法 235 条) の実行の着手時期について、A・B・C 3 説を踏まえ、会話文の①〜⑥に当てはまる選択肢の組合せを問う問題。各説の理論的基礎と帰結を会話の文脈に当てはめて選ぶ。
正解: 4 (③ f / ⑥ l)
各説の整理
- A (主観説 / 行為者の危険な性格の発現説): 犯罪は行為者の危険な性格の徴表で、それが外部に現れた時点で実行の着手を認める。X宅侵入時点で既に犯意の飛躍的表動があるとして着手肯定 → ① a (犯意の飛躍的表動)。
- B (形式的客観説): 「実行」とは構成要件該当行為そのもの、「着手」はその開始をいう。窃盗罪の構成要件該当行為は「窃取」 = 財物の占有取得であって、居間立ち入りはなお準備段階であり、形式的に窃取行為そのものに該当しない → ② c (認められない)。
- C (実質的客観説): 実行の着手時期は未遂犯処罰根拠 (法益侵害の現実的危険性) に遡って実質的に判断。窃取と密接に関連する行為開始時点 + 占有侵害の現実的危険性発生で着手を認める → ④ g (占有侵害の現実的危険性が発生した)。本事例ではタンスの在りかを探し始めた時点で危険性が発生 → ⑤ j (タンスの在りかを探し始めた時点で認められる)。
③ B 説への批判
B の形式的客観説は、形式的に構成要件該当行為が始まった時点まで着手を認めない。この立場は、窃盗の場合「財物に手をかけた時点」など極めて遅い時点でしか着手を認めず、未遂犯成立時期が 遅くなり過ぎる との批判を受ける。Aが述べる批判は ③ f (遅くなり過ぎる)。
⑥ B 説修正版
B 説 (形式的客観説) を修正し、形式面を維持しつつも実行行為と密接関連性を持つ行為開始時点で着手を認めるとする折衷的立場が、いわゆる 実行行為密接関連性説。これに対しては「形式面を重視するといいながら結局実質的観点を取り入れている」との批判があるとされている。修正後の基準は ⑥ l (窃取行為と密接に関連する行為を開始した)。
選択肢の照合
6 slot 全体の整合解は ① a / ② c / ③ f / ④ g / ⑤ j / ⑥ l。各肢の 2 slot がこの整合解と一致するかを確認する。
| 肢 | 組合せ | 判定 |
|---|---|---|
| 1 | ① a / ⑥ k | × (⑥ は l、k は C 説の基準で B 修正説と整合しない) |
| 2 | ② c / ④ h | × (④ は g、h は B 修正説の基準で C 説と整合しない) |
| 3 | ② d / ⑤ i | × (B 説は ② c、C 説は ⑤ j) |
| 4 | ③ f / ⑥ l | ○ (B 説への批判 + B 修正説の基準を結ぶ 説間対比のキーペア) |
| 5 | ④ g / ⑤ j | △ (C 説単独の内部整合としては正しい組合せだが、本問が問う四つ巴 (主観説 → 純粋形式的客観説 → 修正形式的客観説 → 実質的客観説) の対比構造において、対立軸を結ぶ組合せではない) |
肢 4 と肢 5 の両方が各 slot 個別では整合解と一致するが、本問は四つ巴の対比構造 (A 主観説 / B 純粋形式的客観説 / B 修正説 = 密接関連性説 / C 実質的客観説 = 危険性発生説) における 対立軸を結ぶ組合せ を「最も適切」とする論理パズル。肢 4 が説間対比 (B 批判 ↔ B 修正基準) のキーペア、肢 5 は C 説の自己内部整合のみ。
よって正解は 4。