司法試験 / 刑法
2019年 司法試験 刑法 第4問 解説
- 暴行・傷害罪
- 判例
解説
AI 生成この解説は AI が生成したものです。誤りが含まれる可能性があるため、条文・判例などの一次資料を必ず確認のうえ、最終的な判断はご自身で行ってください。
▸問題と選択肢
〔第4問〕(配点:2)
傷害の罪に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものはどれか。(解答欄は,[№8])
- 1.傷害罪は,他人の身体の生理的機能を毀損する犯罪であるから,精神疾患の一種である心的外傷後ストレス障害(いわゆるPTSD)を負わせるなど精神的機能の障害を惹起した場合,傷害罪が成立することはない。
- 2.傷害罪は,暴行罪の結果的加重犯であるから,被害者に暴行を加えずに身体の生理的機能を毀損した場合,傷害罪が成立することはない。
- 3.被害者に睡眠薬を摂取させたことによって一定時間にわたり筋弛緩作用等を伴う急性薬物中毒の症状を生じさせた場合,傷害罪が成立することはない。
- 4.傷害の実行行為者をその現場において精神的に鼓舞する行為が傷害罪の幇助に当たる場合,現場助勢罪が成立することはない。正解
- 5.同時傷害の特例は,刑法の基本原理に対する重大な例外規定であり,厳格に適用されなければならないため,その要件を満たす傷害から被害者に死亡結果が生じた場合,同特例の適用により傷害致死罪が成立することはない。
正解: 4
傷害罪 (刑法 204 条) の成立範囲、行為態様、共犯論、同時傷害の特例 (刑法 207 条) を横断する設問。判例の立場を一つずつ突き合わせる。
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誤り。最決平24.7.24 は、医学的な診断基準を満たす特徴的な精神症状が継続している場合、PTSD も 刑法 204 条 にいう「傷害」に当たると判示した。精神的機能の障害も生理的機能の毀損として傷害概念に含まれるから、「成立することはない」と言い切る本記述は判例の立場と異なる。
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誤り。傷害罪は暴行罪の結果的加重犯としての側面を持つが、暴行を介在させない態様 (たとえば薬物投与、嫌がらせ電話による精神症状惹起など) でも傷害罪は成立しうる。最決平24.1.30 は睡眠薬等を摂取させて急性薬物中毒の症状を生じさせた事案について、暴行を介在させずに傷害罪の成立を肯定している。
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誤り。同じく 最決平24.1.30 は、被害者に睡眠薬等を摂取させて約 6 時間ないし 2 時間にわたる意識障害および筋弛緩作用を伴う急性薬物中毒の症状を生じさせた行為について、人の健康状態を不良に変更したとして傷害罪の成立を認めた。本記述の事案類型はまさに同決定の射程内であり、「成立することはない」は誤り。
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正しい。刑法 206 条 の現場助勢罪は、「自ら人を傷害しなくても」現場で勢いを助けた者を 刑法 204 条 より軽い法定刑で処罰する独立の構成要件と整理される見解が支配的である。特定の正犯者を精神的に鼓舞する行為が傷害の幇助 (刑法 204 条 + 刑法 62 条) としての要件を満たす場合には、より重い傷害幇助が成立し、現場助勢罪は補充的な位置に退くと解される。よって「現場助勢罪が成立することはない」とする本記述は条文構造と整合する。
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誤り。最決平28.3.24 は、共犯関係にない複数の暴行が同一機会に行われ、各暴行がいずれも傷害を生じさせ得る危険性を有していたことが証明されれば、刑法 207 条 は傷害致死罪 (刑法 205 条) についても適用されると判示した。同条は基本原理の例外規定だが、傷害致死への適用自体は否定されていない。
よって正解は 4。