司法試験 / 刑法
2019年 司法試験 刑法 第20問 解説
- 横領罪
- 共犯
- 判例
解説
AI 生成この解説は AI が生成したものです。誤りが含まれる可能性があるため、条文・判例などの一次資料を必ず確認のうえ、最終的な判断はご自身で行ってください。
▸問題と選択肢
〔第20問〕(配点:2)
次の【事例】に関する後記アからオまでの各【記述】を判例の立場に従って検討した場合,誤っているものの個数を後記1から5までの中から選びなさい。(解答欄は,[№36])
【事例】
甲は,友人乙から,借金の返済に窮している旨の相談をされ,乙に対し,「実家に親父の高級腕時計がある。それを盗んで売りさばけば金になる。」と提案し,甲と別居する甲の実父V方からV所有の腕時計を盗むことを唆した。乙は,甲の提案を受け,V方に窃盗に入ることとしたが,仮に,窃盗を行う際にVらに見付かって逮捕されそうになった場合には,Vらをナイフで脅してこれを抑圧し,逃走しようと考えた。
乙は,某日午後0時頃,前記の意図でナイフを購入し,それを携帯してV方に向かい,同日午後1時頃,腕時計を盗む目的で,V方に窓から侵入した上,寝室でV所有の腕時計(時価100万円相当)を窃取した。乙は,その後間もなく,V方玄関ドアの施錠を外して戸外に出て,誰からも発見,追跡されることなく,V方から約1キロメートル離れた公園まで逃げた。乙は,同所において,やはり現金も欲しいと考え,再度V方に窃盗に入ることを決意し,V方に戻り,同日午後1時30分頃,V方玄関内に入ったところ,その直後に帰宅してきたVと鉢合わせとなったことから,逮捕を免れるため,前記ナイフをVの面前に示し,Vが恐怖の余り身動きできないうちに逃走した。
乙は,翌日,甲に前記腕時計の売却を依頼した。甲は,同腕時計の売却先を探し,知人丙に対し,その買取りを申し向けたところ,丙が80万円で購入する旨答えたことから,同腕時計を丙に売却した。甲は,丙から同腕時計の売却代金として80万円を受け取ったが,その後,これを自己のものにしようと考え,乙に無断で,その全額を遊興費として費消した。
【記述】
ア.乙が某日午後0時頃に購入したナイフを携帯してV方に向かったことについては,「強盗の罪を犯す目的」が認められないので,乙に強盗予備罪は成立しない。
イ.乙がVをナイフで脅迫したことについては,腕時計の窃取行為との時間的・場所的な近接性に照らせば,窃盗の機会の継続中に行われたものといえるため,乙に事後強盗罪が成立する。
ウ.甲が乙に腕時計の窃盗を唆したことと,その売却をあっせんしたことは,原因と結果の関係に立つので,窃盗教唆罪と盗品等有償処分あっせん罪は牽連犯となる。
エ.Vの直系血族である甲には盗品等に関する罪について親族等の間の犯罪に関する特例が適用されるため,盗品等有償処分あっせん罪について,甲はその刑を免除される。
オ.甲が腕時計の売却代金を費消したことについては,同腕時計の窃盗犯人である乙は甲に対してその代金の引渡しを請求する権利がないので,甲に委託物横領罪は成立しない。
- 1.1個
- 2.2個
- 3.3個
- 4.4個
- 5.5個正解
問題のリキャップ
事案: 甲は乙に窃盗教唆 → 乙は逮捕免れの備えでナイフを購入してV方に侵入し腕時計窃取 → 退出 → 約 1 km 離れた公園で 30 分経過 → 再度V方戻る → V方玄関で帰宅Vと鉢合わせ → 逮捕免れためナイフで脅し逃走 → 翌日甲が腕時計を丙に売却斡旋・代金 80 万円を乙に無断費消。
アからオまでの 5 つの記述について、判例の立場で 誤っているもの の個数を選ぶ。
正解: 5 (5 個全部誤り)
ア: 誤り
乙は「逮捕されそうになった場合には V らをナイフで脅して抑圧し逃走しよう」との意図でナイフを購入し V 方に向かった。これは 事後強盗 (刑法 238 条) の目的 で凶器を準備した行為であり、判例・通説上、事後強盗目的を含む「強盗の罪を犯す目的」として、強盗予備罪 (刑法 237 条) が成立する。「強盗の罪を犯す目的が認められない」とする本肢は判例の立場と反する。
イ: 誤り
乙は最初の窃盗終了後、誰からも発見・追跡されることなく V 方から約 1 km 離れた公園まで逃げ、約 30 分経過してから 再度の窃盗目的 で V 方に戻った。この 2 回目の侵入時のVへの脅迫は、最初の窃盗の機会から離脱した後の、別個独立の犯罪行為の局面で行われたものであり、判例・通説上、最初の窃取行為との関係で 窃盗の機会の継続中 とは評価できない。よって 1 回目の窃盗を基にした事後強盗罪は成立しない。本肢は誤り。
ウ: 誤り
最判昭24.7.30 は、窃盗教唆罪と盗品等関与罪 (本問では盗品等有償処分あっせん罪 刑法 256 条 2 項) は別個独立の犯罪であり、後者が前者に吸収されるものではないとして両罪の併合的成立を認めた。判例は両者を 牽連犯ではなく併合罪 とする立場であり、本肢の「牽連犯となる」は判例の立場と反する。よって誤り。
エ: 誤り
刑法 257 条 1 項の親族等の間の特例について、判例・通説は、本特例は 本犯者と盗品罪犯人との間 に親族関係がある場合に適用されると解する1。本問では、被害者 V と盗品罪犯人甲との間には直系血族関係があるが、本犯者乙と盗品罪犯人甲は友人にすぎず親族関係がない。よって甲には親族間特例が適用されず、刑の免除を受けない。「免除される」とする本肢は誤り。
オ: 誤り
腕時計の売却代金 80 万円は、乙が甲に売却斡旋を委託したことに基づき甲が受領・占有している金銭である。乙は窃盗犯人であり、腕時計に対する正当な所有権を持たないので、民法上、乙は甲に代金引渡しを請求する権利を有しない。
しかし、不法原因に基づく委託の場合であっても、委託物の所有権は受託者には移転せず、受託者の不法領得は委託物横領罪 (刑法 252 条) を構成する と整理されることが多い。乙が民事上代金引渡請求権を有しないからといって、刑法上の委託物横領罪の成立を否定する根拠にはならない。本肢の「委託物横領罪は成立しない」は通説的整理と反する。
よってア・イ・ウ・エ・オ すべて誤り = 5 個。正解は 5。
Footnotes
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257 条 1 項の親族等の間の特例について「本犯者と盗品罪犯人との間の親族関係」を要求する整理は、Wikipedia「盗品等関与罪」 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9B%97%E5%93%81%E7%AD%89%E9%96%A2%E4%B8%8E%E7%BD%AA および各種判例解説で確立した通説整理。courts.go.jp 一次資料を伴う判例特定情報は本稿執筆時点で特定できず、留保表現で運用 (SKILL §3 表 4 行目)。 ↩