司法試験 / 刑法
2021年 司法試験 刑法 第10問 解説
- 窃盗罪
解説
AI 生成この解説は AI が生成したものです。誤りが含まれる可能性があるため、条文・判例などの一次資料を必ず確認のうえ、最終的な判断はご自身で行ってください。
▸問題と選択肢
〔第10問〕(配点:2)
窃盗罪における不法領得の意思についての次の各【見解】に従って後記の各【事例】における甲の罪責を検討した場合,後記1から5までの各【記述】のうち,正しいものはどれか。なお,後記の各【事例】における甲の行為は,いずれも窃盗罪の客観的要件を全て満たすものとする。(解答欄は,[No.20])
【見解】
A.不法領得の意思として,権利者を排除して所有者として振る舞う意思及び何らかの用途に従って利用・処分する意思が必要である。
B.不法領得の意思として,権利者を排除して所有者として振る舞う意思は必要であるが,何らかの用途に従って利用・処分する意思は不要である。
C.不法領得の意思として,何らかの用途に従って利用・処分する意思は必要であるが,権利者を排除して所有者として振る舞う意思は不要である。
D.不法領得の意思は不要である。
【事例】
Ⅰ.甲は,勤務先の会社の上司乙を困らせる目的で,乙が机の引き出し内に保管していた同社の銀行届出印をひそかに持ち出し,自宅の天井裏に隠匿した。
Ⅱ.甲は,乙が不在であることを知り,一時的に借用して直ちに戻す意思で,乙方の玄関先に無施錠で駐輪されていた乙の自転車を無断で乗り出し,100メートル先の店まで移動して用事を済ませ,その乗り出しから5分後,同自転車を同玄関先に戻した。
Ⅲ.甲は,X市議会議員選挙に際し,候補者乙の得票数を水増しする目的で,同市選挙管理委員会が保管していた投票用紙50枚を投票所から持ち出し,乙の支持者らに交付して乙に対する投票を依頼した。
【記述】
- 1.A及びBいずれの見解によっても,事例Ⅰでは窃盗罪が成立する。
- 2.A及びDいずれの見解によっても,事例Ⅱでは窃盗罪が成立する。
- 3.B及びCいずれの見解によっても,事例Ⅱでは窃盗罪が成立する。
- 4.B及びDいずれの見解によっても,事例Ⅲでは窃盗罪が成立する。正解
- 5.C及びDいずれの見解によっても,事例Ⅰでは窃盗罪が成立する。
正解: 4
不法領得の意思の要否・内容に関する学説対立 (二要件説 / 排除意思説 / 利用処分意思説 / 不要説) を、3 つの典型事例 (刑法 235 条 の主観面) に当てはめて検討する設問。
4 説の整理
- A 説 (二要件説): 権利者を排除して所有者として振る舞う意思 (排除意思) と、何らかの用途に従って利用・処分する意思 (利用処分意思) の 双方 を要する。
- B 説 (排除意思説): 排除意思のみ要し、利用処分意思は不要。
- C 説 (利用処分意思説): 利用処分意思のみ要し、排除意思は不要。
- D 説 (不要説): 客観的構成要件で足り、不法領得の意思は不要。
事例の主観面
事例Ⅰ (上司を困らせる目的で銀行届出印を天井裏に隠匿) は、永続的に占有を奪う意思があり 排除意思あり だが、何の用途にも使わず隠匿するだけなので 利用処分意思なし 。
事例Ⅱ (5 分間だけ自転車を借りて返却) は、直ちに返す前提なので 排除意思なし だが、移動手段として自転車本来の用法に従い使っている以上 利用処分意思あり 。
事例Ⅲ (得票数水増し目的で投票用紙 50 枚を持ち出し交付) は、選挙管理委員会の占有を永続的に奪う意思があり 排除意思あり 、かつ投票用紙として用途どおり用いる意思があるので 利用処分意思あり 。
各記述の検討
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誤り。事例Ⅰは利用処分意思を欠くため、双方を要する A 説では窃盗罪は成立しない (B 説では排除意思のみで足りるので成立)。「A 及び B いずれの見解によっても成立する」は A 説で崩れる。
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誤り。事例Ⅱは排除意思を欠くため、双方を要する A 説では成立しない (D 説では成立)。「A 及び D いずれによっても成立」は A 説で崩れる。
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誤り。事例Ⅱは排除意思を欠くため、排除意思を要件とする B 説では成立しない (C 説では利用処分意思があるので成立)。「B 及び C いずれによっても成立」は B 説で崩れる。
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正しい。事例Ⅲは排除意思があるので B 説で成立、主観要件不要の D 説でも当然成立する。両説いずれによっても窃盗罪が成立する。
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誤り。事例Ⅰは利用処分意思を欠くため、利用処分意思を要件とする C 説では成立しない (D 説では成立)。「C 及び D いずれによっても成立」は C 説で崩れる。
よって正解は 4。