司法試験 / 刑法
2021年 司法試験 刑法 第20問 解説
- 暴行・傷害罪
- 違法性
- 判例
解説
AI 生成この解説は AI が生成したものです。誤りが含まれる可能性があるため、条文・判例などの一次資料を必ず確認のうえ、最終的な判断はご自身で行ってください。
▸問題と選択肢
〔第20問〕(配点:4)
次の【事例】に関する後記アからオまでの各【記述】を判例の立場に従って検討し,正しい場合には1を,誤っている場合には2を選びなさい。(解答欄は,アからオの順に[No.32]から[No.36])
【事例】
暴力団A組の組員甲は,クラブで飲酒していた際,たまたま入店してきた旧知の暴力団B組の組員乙に因縁を付けられて口論になり,乙に拳で殴りかかった。乙は,これを避けた上,更に殴りかかろうとしてきた甲の胸部を拳で数回強打した。その数分後,B組の組員丙は,乙と待ち合わせをしていた上記クラブに到着し,その直後に甲の態度に激高し,いきなり甲の胸部を拳で数回強打した。甲は,全治約1か月間を要する肋骨骨折の傷害を負ったが,同傷害が乙と丙のいずれの暴行によって生じたのかは不明であった。甲は,一旦帰宅したものの怒りが収まらず,何か嫌がらせをしてやろうと考え,金属バットを持ち,覆面で顔を隠してB組事務所に行き,その玄関ドアを同バットでたたいて凹損させた。その直後,甲は,A組事務所に行き,A組の組員丁に対し,B組組員から殴られた腹いせにB組事務所の玄関ドアを凹損させたことを話した。丁は,B組との関係悪化を避けるとともに,甲の刑事責任を免れさせるため,甲との間で,犯行時間帯に甲がA組事務所にいたことにする旨の口裏合わせをした。また,丁は,B組組員複数名による襲撃を受ける可能性もあると考え,万が一に備えて,着衣のポケットに護身用として果物ナイフを入れた。他方,乙及び丙は,上記ドアが凹損させられたとの連絡を受け,甲の仕業だろうと考え,A組事務所へ向かった。乙は,応対に出た丁に対し,「甲を出せ。」と言った。丁は,「何の話だ。」と応じたが,乙は,その態度に憤激し,「しらばっくれるな。」と言い,持っていた拳銃を取り出して丁に突き付けた。丁は,自己の身を守るため,上記ナイフで乙の腹部を1回突き刺し,乙に全治約1か月間を要する腹部刺創の傷害を負わせた。丁は,駆けつけた警察官に逮捕され,その後,逃走していた甲も上記ドアを凹損させた事実で逮捕された。丁は,甲の身柄拘束中,甲の犯行に関する参考人として取調べを受けた際,上記口裏合わせに従い,上記ドアが凹損させられた時間帯に甲がA組事務所にいた旨のうその供述をした。
【記述】
ア.乙が甲の胸部を拳で強打した行為については,甲からの侵害が,乙が甲に因縁を付けたことにより招かれたものである以上,正当防衛又は過剰防衛が成立することはない。[No.32]
イ.乙は,甲の肋骨骨折について,丙の行為のみにより生じた可能性がある以上,丙との間で共謀が成立していない限り,傷害罪の刑事責任を負わない。[No.33]
ウ.甲がB組事務所の玄関ドアを凹損させた行為については,同ドアが工具を使用すれば容易に取り外せる構造であった場合,建造物損壊罪は成立しない。[No.34]
エ.丁が果物ナイフで乙の腹部を突き刺した行為については,B組組員から襲撃を受けることを予期し,凶器ともいえるナイフを準備している以上,その予期の程度にかかわらず,侵害の急迫性を欠くものといえ,正当防衛又は過剰防衛は成立しない。[No.35]
オ.丁が,甲の犯行に関する参考人として取調べを受けた際,B組事務所の玄関ドアが凹損させられた時間帯に甲がA組事務所にいた旨のうその供述をした行為については,犯人隠避罪が成立する。[No.36]
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- 2正解
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- 2正解
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- 2正解
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- 2正解
- 1正解
- 2
正解: ア=2、イ=2、ウ=2、エ=2、オ=1
刑法 36 条 ・ 207 条 ・ 260 条 ・ 103 条 を横断する短答問題。各記述で 「一律に〜が成立しない」型の断定 が判例の立場と合致するかを点検する設問。
ア. 誤り。自招侵害の事案で正当防衛・過剰防衛が一律に否定されるわけではない。招致行為の態様と反撃に至る経緯・反撃行為の相当性を踏まえて成立可否を判断するのが一般的な整理であり、「招かれた以上、成立することはない」という一律否定はこの整理と異なる。乙の因縁付け・殴打が甲の反撃を招いた事情は急迫性ないし防衛行為の相当性の判断要素となるにとどまると解されている (刑法 36 条)。
イ. 誤り。乙と丙が時間を異にして甲を別個に殴打し、肋骨骨折がいずれの暴行から生じたか不明な事案では、まさに 刑法 207 条 (同時傷害の特例) が想定する場面である。同条は「共犯の例による」として、共謀がなくても各行為者に傷害の結果を帰責しうる構造を採るのだから、「共謀が成立していない限り傷害罪の刑事責任を負わない」とする本記述は誤り。
ウ. 誤り。建造物損壊罪 (刑法 260 条) の客体性は、当該部分が建物に取り付けられて建物の効用を担っているか、毀損が建物自体の効用を害するか、で判断される。外部と接する玄関ドアのように建物の使用に不可欠な部分は、工具を用いれば取外しが可能であっても建造物の一部にあたると整理されている。「容易に取り外せる構造」という一点で建造物性を否定する本記述は誤り。
エ. 誤り。襲撃の予期があり、かつ、その機会を利用して積極的に相手に加害する意思 (積極的加害意思) で侵害に臨んだような場合に侵害の急迫性が否定されると整理されているのであって、予期と凶器準備があれば「予期の程度にかかわらず」一律に急迫性を欠くと解されているわけではない。予期の程度・対抗準備の内容・現場での行動経緯を総合して急迫性を判断するのが通説的整理であり、「予期の程度にかかわらず」と一律否定する本記述は誤り (刑法 36 条)。
オ. 正しい。刑法 103 条 の「隠避」は、捜査機関による身柄確保・取調べの妨害となる一切の行為を含み、犯人が既に逮捕・勾留されている場合であっても成立しうると解されている。身柄拘束中の犯人について犯人と通謀のうえ参考人取調べで虚偽供述をする行為が「隠避」に該当すると整理されており、丁が甲との口裏合わせに従って甲のアリバイを偽る供述をした行為は犯人隠避罪を構成する。
よって正解は ア=2、イ=2、ウ=2、エ=2、オ=1。