司法試験 / 刑法
2022年 司法試験 刑法 第15問 解説
- 放火罪
解説
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▸問題と選択肢
〔第15問〕(配点:4)
放火罪に関する次の各【見解】についての後記アからオまでの各【記述】を検討し、正しい場合には1を、誤っている場合には2を選びなさい。(解答欄は、アからオの順に[No.22]から[No.26])
【見解】
A.放火罪にいう「焼損」とは、火が媒介物を離れて目的物に燃え移り、目的物が独立して燃焼を継続し得るに至った状態を意味する。
B.放火罪にいう「焼損」とは、目的物の重要部分が燃焼し、本来の効用を喪失した状態を意味する。
【記述】
ア.Aの見解に対しては、Bの見解から、放火罪が公共危険罪であることを軽視しているとの批判が可能である。[No.22]
イ.Aの見解に対しては、Bの見解よりも中止犯が成立する範囲が狭くなるため、刑事政策的に望ましくないとの批判が可能である。[No.23]
ウ.Bの見解に対しては、刑法第109条第2項、第110条第2項が自己所有物に対する放火を処罰していることから、放火罪の既遂時期をその財産犯的側面から決するのは妥当でないとの批判が可能である。[No.24]
エ.Bの見解に対しては、客体が建造物の場合、全焼又は半焼に至らない限り放火罪が既遂に達しない可能性があり、その場合には既遂時期が遅きに失するとの批判が可能である。[No.25]
オ.A及びBのいずれの見解に対しても、不燃性の建造物に放火した場合、内装の融解により有毒ガスが発生し、人の生命・身体に危険を生じさせたとしても、建造物自体が燃焼しない限り放火罪の既遂犯が成立しないため、処罰範囲が狭すぎるとの批判が可能である。[No.26]
- 1
- 2正解
- 1正解
- 2
- 1正解
- 2
- 1正解
- 2
- 1正解
- 2
正解: ア=2、イ=1、ウ=1、エ=1、オ=1
放火罪 (刑法 108 条 以下) の 既遂時期 をめぐる学説対立。A 説 (独立燃焼説) は火が媒介物を離れ目的物が独立燃焼を継続し得る状態を「焼損」とする早期既遂の立場で、放火罪の 公共危険罪 としての性質を重視する。B 説 (効用喪失説) は目的物の重要部分が燃焼し本来の効用を喪失した状態を「焼損」とする後期既遂の立場で、目的物の 財産的価値の侵害 に焦点を当てる。
ア. 誤り。A 説 (独立燃焼説) はむしろ放火罪を 公共危険罪 と捉える立場を徹底し、目的物の損壊を待たず公共の危険を生じさせた早い段階で既遂を認める見解である。「公共危険罪であることを軽視している」との批判は方向性が逆で、A 説に対する批判として成り立たない。
イ. 正しい。A 説では既遂時期が早期に到来するため、行為者が燃焼開始後に消火に転じても既に既遂に達しており、中止犯 (刑法 43 条 但書) が成立する余地が狭まる。これは未遂段階での自発的中止を奨励するという中止犯制度の刑事政策的趣旨を後退させるため、B 説からの典型批判として成り立つ。
ウ. 正しい。B 説 (効用喪失説) は焼損を財産的価値の毀損として捉えるが、刑法 109 条 2 項・刑法 110 条 2 項 は 自己所有物 に対する放火を公共の危険発生を要件として処罰している。自己所有物への放火には財産権侵害の側面はないにもかかわらず処罰される以上、放火罪の既遂時期を財産犯的側面から決するのは現行法の建付けと整合しない、との批判が B 説に向けられる。
エ. 正しい。B 説では建造物の 重要部分 の燃焼と効用喪失が要件となるため、建造物の場合「全焼又は半焼」レベルに至らなければ既遂が認められない事案が出てくる。これでは公共危険発生時から既遂までのタイムラグが大きくなり、公共危険罪の保護法益から見て 既遂時期が遅きに失する との批判が成り立つ。
オ. 正しい。A 説・B 説のいずれも目的物 (建造物) 自体の 燃焼 を焼損概念の前提としている。したがって、不燃性の建造物に放火し内装の融解で有毒ガスが発生して人の生命・身体に危険が生じても、建造物自体が燃焼しない限り放火罪の既遂は成立せず、公共危険罪としての処罰範囲が狭すぎるとの批判は両説に妥当する (この問題意識から「効用喪失」を機能的に捉え直す新効用喪失説や燃焼概念を緩める見解が主張されている)。
よって正解は ア=2、イ=1、ウ=1、エ=1、オ=1。