司法試験 / 刑法
2022年 司法試験 刑法 第3問 解説
- 詐欺罪
- 構成要件
- 判例
解説
AI 生成この解説は AI が生成したものです。誤りが含まれる可能性があるため、条文・判例などの一次資料を必ず確認のうえ、最終的な判断はご自身で行ってください。
▸問題と選択肢
〔第3問〕(配点:4)
詐欺罪の実行の着手に関する次の【事例】及び【判旨】についての後記アからオまでの各【記述】を検討し、正しい場合には1を、誤っている場合には2を選びなさい。(解答欄は、アからオの順に[No.4]から[No.8])
【事例】甲及び乙は、既に100万円の詐欺被害に遭っていたVに対し、警察官に成り済まして電話し、犯人検挙及び被害回復のために必要と誤信させ、Vに預金を払い戻させた上、警察官に成り済ました甲がV宅に赴き、捜査に必要であるから現金を預かるとのうそを言ってVから現金をだまし取ることを計画した(以下「本件計画」という。)。その上で、乙は、本件計画に従ってVに電話し、捜査に必要であるから預金を全部払い戻してほしいとうそを言い、これを信じたVが預金を払い戻して帰宅すると、その約1時間後に再び乙がVに電話し、間もなく警察官がV宅に行くとうそを言った。しかし、甲は、V宅に到着する直前、警察官に逮捕された。
【判旨】1回目と2回目の電話における各うそ(以下「本件うそ」という。)を述べた行為は、本件計画の一環として行われたものであり、本件うその内容は、本件計画上、Vが現金を交付するか否かを判断する前提となるよう予定された事項に係る重要なものであった。そして、このように段階を踏んでうそを重ねながら現金を交付させるための犯行計画の下において述べられた本件うそには、Vに現金の交付を求める行為に直接つながるうそが含まれており、既に100万円の詐欺被害に遭っていたVに対し、本件うそを真実であると誤信させることは、Vにおいて、間もなくV宅を訪問しようとしていた甲の求めに応じて即座に現金を交付してしまう危険性を著しく高めるものといえ、本件うそを一連のものとしてVに対して述べた段階において、Vに現金の交付を求める文言を述べていないとしても、詐欺罪の実行の着手があったと認められる。
【記述】
ア.【判旨】は、犯罪の実行行為自体ではなく、実行行為に密接で、被害を生じさせる客観的な危険性が認められる行為を開始することによっても未遂罪が成立し得るとする立場と矛盾しない。[No.4]
イ.【判旨】は、本件うそとその後に予定されたうそを述べる行為全体を詐欺罪の構成要件である「人を欺く行為」と解した上で、一連の実行行為の開始があることから未遂犯の成立を認める立場と矛盾する。[No.5]
ウ.【判旨】は、実行の着手を判断する際に行為者の犯行計画を考慮する立場を前提としている。[No.6]
エ.【判旨】は、1回目の電話では実行の着手を認めず、2回目の電話で実行の着手が認められると明示している。[No.7]
オ.【判旨】は、詐欺罪の実行の着手が認められるためには必ずしも財物交付要求行為が必要ないとの立場を前提としている。[No.8]
- 1正解
- 2
- 1
- 2正解
- 1正解
- 2
- 1
- 2正解
- 1正解
- 2
正解: ア=1、イ=2、ウ=1、エ=2、オ=1(誤りはイ・エ)
詐欺罪における実行の着手時期を判示した 最決平30.3.22 の射程理解を問う。判旨は、財物交付要求文言が未だ述べられていない段階でも、本件うそが交付要求行為に直接つながり、誤信させれば即座の交付危険性を著しく高める事実関係であれば、詐欺罪の実行の着手があると認めた。
ア. 正しい。判旨は「Vに現金の交付を求める文言を述べていないとしても」と留保しつつ、本件うそが交付要求に「直接つながる」もので「即座に現金を交付してしまう危険性を著しく高める」と評価して着手を認めた。これは、実行行為そのものではなくとも、実行行為に密接で結果発生の客観的危険性を生じさせる行為の開始を着手とする実質的客観説(密接性 + 危険性説)と整合する。刑法 43 条 の解釈論として両立可能。
イ. 誤り。判旨は「本件うそを一連のものとしてVに対して述べた段階において」と判示しており、本件うそが「Vに現金の交付を求める行為に直接つながる」と評価する箇所からは、本件うそ自体を 刑法 246 条 の「人を欺く行為」の一部と捉える読み方も可能である。したがって、本件うそとその後に予定されたうその全体を一連の実行行為と構成して着手を認める立場と、判旨が「矛盾する」とまで断ずるのは判旨の射程を狭く読み過ぎている。
ウ. 正しい。判旨は冒頭で「本件計画の一環として行われた」「本件計画上、Vが現金を交付するか否かを判断する前提となるよう予定された事項」と述べ、本件うその位置づけを犯行計画に照らして評価している。実行の着手判断において行為者の犯行計画を考慮する立場を前提としていることが明らかである。
エ. 誤り。判旨は「本件うそを一連のものとして述べた段階において」と判示するにとどまり、1 回目の電話と 2 回目の電話のいずれの時点で着手を認めるかを切り分けて明示してはいない。「2 回目の電話で着手」と特定的に判示したと読むのは、判旨の文言を超えている。
オ. 正しい。判旨は「Vに現金の交付を求める文言を述べていないとしても、詐欺罪の実行の着手があったと認められる」と明示している。詐欺罪の着手認定に財物交付要求行為が必須でないとする立場が判旨の前提である。
よって誤りはイ・エ。