司法試験 / 刑法
2022年 司法試験 刑法 第9問 解説
- 刑法各論
解説
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▸問題と選択肢
〔第9問〕(配点:3)
毀棄及び隠匿の罪の「毀棄」、「損壊」及び「傷害」の意義に関する次の各【見解】に従って後記1から5までの各【記述】を検討した場合、正しいものを2個選びなさい。(解答欄は、[No.15]、[No.16]順不同)
【見解】
A.対象物の効用を害する一切の行為をいう。
B.対象物の全部又は一部を物質的に破壊、毀損してその効用を害する行為をいう。【記述】
- 1.いずれの見解によっても、器物損壊罪の客体は、公用文書等毀棄罪、私用文書等毀棄罪、建造物等損壊罪の客体以外の動産に限られ、不動産は含まれないと解することになる。
- 2.Aの見解によれば、他人が観賞用に鳥籠内で飼っている小鳥を鳥籠から屋外に逃がした場合、器物損壊罪が成立することになる。正解
- 3.Aの見解によれば、公衆トイレの外壁に美観を著しく損ねる落書きをし、そのままでの使用継続を困難にさせ、原状回復に相当の費用を生じさせた場合、建造物損壊罪が成立することになる。正解
- 4.Bの見解によれば、裁判所から隠匿目的で競売記録を持ち出し自宅で保管した場合、公用文書毀棄罪が成立することになる。
- 5.Bの見解によれば、信書隠匿罪は、器物損壊罪の構成要件にも当たる行為を特に軽く処罰する罪と解することになる。
正解: 2 と 3
毀棄罪・損壊罪の「毀棄」「損壊」「傷害」をどう捉えるかについて、効用毀損説 (A) は物質的破壊を要せず効用侵害で足りるとし、物質的損壊説 (B) は物質的な破壊・毀損を伴う効用侵害を要するとする。
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誤り。本記述は両見解によって器物損壊罪 (刑法 261 条) の客体が動産に限られると断ずるが、261 条は「前 3 条に規定するもののほか他人の物を損壊し、又は傷害した者」を処罰するのみで、客体を動産に限定する文言はない。不動産が客体となり得るかは「物」の解釈の問題であり、「毀棄」「損壊」「傷害」の語義に関する A・B の見解対立から直接導かれるものではない。よって両見解とも動産限定を帰結する、とする整理は誤り。
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正しい。鳥籠から観賞用の小鳥を逃がす行為は鳥籠も小鳥も物理的に破壊しないが、観賞用としての効用 (=飼育・鑑賞) を喪失させる。効用毀損説 (A) は物質的破壊を要しないから、効用侵害だけで「損壊」を肯定でき、刑法 261 条の器物損壊罪が成立する。
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正しい。公衆便所外壁への落書きについて、判例上、外観・美観を著しく汚損し原状回復に相当の困難を生じさせ効用を減損させたとして 刑法 260 条 前段の「損壊」に当たるとされている 1。物質的破壊は伴わないが効用侵害を捉えて「損壊」を認める判断であり、効用毀損説 (A) からは無理なく説明できる。
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誤り。物質的損壊説 (B) によれば、隠匿目的で競売記録を持ち出し自宅で保管しただけでは記録自体に物質的な破壊・毀損は加わっていない。効用は害されているが、物質的損壊なしに「毀棄」を認めない B 説からは、刑法 258 条 の公用文書毀棄罪は成立しない。なお A 説からは、隠匿による利用妨害=効用毀損として成立余地があるが、本記述は B 説について「成立する」とする点で誤り。
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誤り。物質的損壊説 (B) では、信書を隠匿しても物質的な破壊・毀損がない以上、刑法 261 条の器物損壊罪の構成要件にはそもそも該当しない。該当しない行為を「特に軽く処罰する罪」と整理することはできず、B 説の下では 263 条の信書隠匿罪は 261 条で捕捉できない隠匿行為を独立に処罰する規定と位置付けるのが筋になる。記述のような「器物損壊罪の構成要件にも当たる行為を特に軽く処罰する」という整理は、隠匿を効用毀損として 261 条の構成要件該当性を認めたうえで 263 条をその減軽類型と捉える A 説的な発想であり、B 説の説明としては誤り。
よって正解は 2 と 3。
Footnotes
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「公衆便所の外壁への落書きが建造物損壊にあたるとされた事例」(有斐閣 Online) は、最決平18.1.17 が公衆便所外壁への落書きを刑法 260 条前段の「損壊」に当たるとした事例として整理。https://yuhikaku.com/articles/-/5970 ↩