司法試験予備試験 / 刑法・刑事訴訟法(短答)
2023年 司法試験予備試験 刑法・刑事訴訟法(短答式) 第22問 解説
- 証人尋問
- 判例
解説
AI 生成この解説は AI が生成したものです。誤りが含まれる可能性があるため、条文・判例などの一次資料を必ず確認のうえ、最終的な判断はご自身で行ってください。
▸問題と選択肢
〔第22問〕(配点:2)
次の【事例】における【乙の証人尋問】中の⑴から⑷までの下線部分に関する後記アからオまでの【記述】のうち、誤っているものの組合せは、後記1から5までのうちどれか。ただし、判例がある場合には、それに照らして考えるものとする。(解答欄は、[№36])
【事例】
乙は、暴力団の構成員である甲と共謀の上、対立する暴力団の構成員が多数在室していた事務所の外壁にガソリンをまいて着火し、同事務所を全焼させたとの現住建造物等放火の事実で逮捕された。乙は、捜査段階で検察官に対し、「私の運転する車で事務所に赴き、甲が同所で降車してガソリンをまいて着火した。甲とは、私の兄である丙の紹介で知り合い、本件で使用した車やガソリンは丙が準備したものである。」などと甲との共謀や丙の関与を認める供述をし、その内容の検察官面前調書が作成された。その後、乙は、甲との共同被告人として起訴された。第1回公判期日では、甲は、公訴事実について、「乙と共謀をしたことはなく、実行行為をしたこともない。」旨を述べて否認し、甲の弁護人は検察官が取調べを請求した前記乙の検察官面前調書について不同意である旨の意見を述べた。一方、乙は、公訴事実を認め、甲と乙の公判は分離された。その後、乙は、甲の公判期日に証人として呼ばれた。
【乙の証人尋問】
裁判長宣誓をしてください。
乙⑴宣誓(以下省略)
検察官⑵あなたは現住建造物等放火罪で起訴されていますね。
乙はい。
検察官⑶その事件を誰と一緒に行ったのですか。
乙甲さんと一緒にやりました。
検察官今回の事件についてあなたが関わることになったきっかけや、あなたの役割について教えてください。
乙⑷答えたくありません。
【記述】
ア.乙は、自らも同一の事件で公訴提起されていることを理由に、下線部⑴の宣誓を拒むことはできない。
イ.下線部⑵、⑶の尋問方法は、いずれも誘導尋問であり、主尋問では許されない。
ウ.下線部⑷において、答えたくない理由が、「自己が刑事訴追を受け、又は有罪判決を受けるおそれのある」ことであったとしても、乙が証言を拒むことができない場合もある。
エ.下線部⑷において、乙は、兄である丙が「刑事訴追を受け、又は有罪判決を受けるおそれのある」ことを理由に、丙に関する事項についての証言を拒むことができる。
オ.下線部⑷において、乙は、真実の証言をしたとしても、その内容が検察官面前調書の内容と齟齬したときには偽証罪の訴追を受けるおそれがあることを理由に、証言を拒むことができる。
- 1.アエ
- 2.アオ
- 3.イウ
- 4.イオ正解
- 5.ウエ
正解: 4
公判分離後に共同被告人から証人へ転じた者の宣誓義務 (154 条)、主尋問における誘導尋問の原則と例外 (刑訴規則 199 条の 3)、自己負罪拒否特権 (146 条) と刑事免責 (157 条の 2)、近親者の証言拒絶権 (147 条 1 号) の親族範囲、および真実の証言と偽証罪のおそれが交錯する設問。
ア. 正しい。刑訴法 154 条は「証人には、この法律に特別の定のある場合を除いては、宣誓をさせなければならない」と規定する。乙は同一事件で起訴されているが、すでに公判が分離され、甲の公判では他人の被告事件における証人として呼ばれている以上、154 条の原則どおり宣誓義務を負う。「自らも同一事件で公訴提起されている」ことは 154 条但書の「特別の定」に当たらない。
イ. 誤り。刑訴規則 199 条の 3 は主尋問における誘導尋問を原則禁止としつつ、争いのない事項や前提事項等は例外として許す。⑵「あなたは現住建造物等放火罪で起訴されていますね」は乙の起訴という争いのない既定事実の確認であり、例外として主尋問でも許される。⑶「その事件を誰と一緒に行ったのですか」はオープン形式で特定の答えを暗示しておらず、そもそも誘導尋問の定義に当たらない。両者とも「誘導尋問であり主尋問では許されない」とは言えない。
ウ. 正しい。刑訴法 146 条は自己が刑事訴追・有罪判決を受けるおそれのある証言について拒絶権を認めるが、157 条の 2 により刑事免責が付与されれば「おそれ」が消失し、拒絶権は行使できなくなる。すでに当該事件で有罪判決が確定している場合等も同様に「おそれ」が観念し得ない。したがって「証言を拒むことができない場合もある」とする本肢は正しい。
エ. 正しい。刑訴法 147 条 1 号は「三親等内の血族」を証言拒絶権の対象親族として列挙する。兄は 2 親等の血族でこれに含まれるため、乙は兄丙が刑事訴追又は有罪判決を受けるおそれのある事項について、丙に関する証言を拒むことができる。
オ. 誤り。刑訴法 146 条が拒絶事由とするのは「自己が 刑事訴追を受け、又は有罪判決を受ける虞のある証言」である。偽証罪 (刑法 169 条) は「虚偽の陳述」を要件とするため、真実の証言をする限り偽証罪は成立せず、検察官面前調書と齟齬するか否かは偽証罪の成否と論理的に無関係である。真実証言をしても偽証罪追及のおそれがあるという前提自体が成り立たない以上、これを理由に証言を拒むことはできない。
よって誤っているのはイ・オの組合せ、正解は 4。